寒暖の差を繰り返すこの時期になると、ふっと浮かぶ
歌がある。
福島泰樹の歌である。
鉄橋のようにわたしは生きるのだ辛い三月四月を超えて
今年もまた、そんな3月4月を迎えている。
吉増さんの奥様マリリアさんから戴いた英文のメッセージの
書かれた白い封筒。
それに生活費を入れて内側胸ポケットに納めていた。
右側内ポケットには保険証や銀行通帳、左胸には現金類
といつも決めている。
これが忽然と消えて呆然とした。
こうなれば収蔵作品を売却してでも金策せねばならぬ。
何点かを選び道外の知人・友人に声をかけた。
作品には思いもあり、作品・人と出会ったときの個の時間
も息づいている。
もう背に腹は代えられない。
とはいえ、そんなに現実は甘いものではない。
普段から画商をしているわけではないので、段取りが
悪いのだ。
そんな四苦八苦の3月を送っていると、一個の小荷物が
届いた。
ほぼ定期的に送られてくるKさんからの差し入れだ。
中にはお味噌、お米、各地名産のお総菜、チーズ、甘味
類等が隙間無く詰められていた。
いつもそのきめ細やかなご配慮に感動する。
マリアの献心のようだなあ。
昔学生時代東京の下宿に届いた母親の小荷物のようで
もある。
お袋の他に当時の恋人から届いた小荷物も記憶にあるが、
それはほんわかしたハートのように曖昧である。
女房が他界した後本州に嫁いだ妹から小荷物が届いた事
もある。
これはパンツ等の下着類と佃煮だった。
Kさんからの定期便は食品も多いけど、下着類の時もあった
り、小型の掃除機の時もある。
母でもあり、妹でもあるマリアの愛だと思う。
古い友人であるOが心配してくれ、お互い辛い3月だなあ、と
メールをくれた。
その言葉に冒頭の福島泰樹の歌を思い出した。
Oを含めた友人たちとかって円山北町でこの福島のライブレコード
を出版した事がある。
レコードなので、ライナーノートは多くの人のたくさんの言葉を
抄録できたのだ。
その巻頭に掲げらた一首である。
この一首を選んだ時もきっと厳しい日常があったに違いない。
そんな時を超えて今に繋がる作品の保つ力を信じて今日も
また、<鉄橋のように生きるのだ 辛い三月四月を超えて>
と、自分に言い聞かせている。
テンポラリースペース」札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel011-737-5503