光の滴降る降る。
南の陽射し、西の陽射し。
午前から午後にかけて陽射しの変化とともに
煌めきが移動する。
ガラスの房の下方の溜りに光が虹彩を放って
宿り、揺らめく。
三百本すべてが一斉に煌めく短い時間がある。
陽光が雲で翳り流れ、また煌めく。
そんな光曼陀羅の至福の時がある。
外に吊られたガラスの房たちも路上の風に吹かれ
静かな音を響かせている。
午後7時、大田ヒロさんの演奏が始まった。
古い鉄の板を円で切り取った自製の楽器。
足を骨折して以来既成の打楽器は使えず、叩きたく
思う素材を見つけ自ら打楽器を創っている。
テンポラリースペースでは三度目の登場だ。
円山北町最後の高臣大介展、今の場所最初の大介展。
どちらも伝説的な名演奏だった。
坊主頭になり、袈裟のような黒の羽織を着込んだ大田
ヒロが静かに黒い鉄の円盤を撫でるように叩き出す。
小一時間深く内なる世界へと降り立ち、そして立ち上る
瞑想性に満ちた音の降臨だった。
ガラスとキャンドルの煌きの中で、掌(たなごころ)の音
が光臨していた。
演奏を終えてゆっくり着替えている大田ヒロさんに、大介
が近寄り、もう一度とアンコールをせびる。
いや~あと言いながら、手はもう一度服に伸び着替えに
入っている。
やる気である。
アンコールはほとんどしない大田ヒロ。
しかしここでの演奏会では二度ともアンコールに応えて
いる。
独奏で自家製打楽器を叩き続ける消耗で、ほとんど1時間
は、限界なのだ。
それを超えて打つには、何らかの新たなエネルギーが加わる
ものが発生した時だけだと思う。
高臣大介展では不思議とそうした時間が訪れる。
二度目の演奏は入魂の撃ち刻みで、長く止らない大拍手だった。
一吹き入魂。
一打入魂。
このふたり陽陰違えど、似てるなあ。
呼気・吸気の往還。
だから大田ヒロにとってこれはアンコールではないのだ。
あらためてふたりの深い友情を想った。
ガラスに注入される光の呼気吸気。
打楽器に注入される音の呼気吸気。
素晴らしい「みつめあう。」時空間だった。
*高臣大介ガラス展「みつめあう。」-2月7日(日)まで。
am11時ーpm7時。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503