2016年 01月 16日
2012年2月「ヌプサムメムー野傍ノ泉池」と題した 展示を清華亭とテンポラリースペースの2ヵ所を使い展示 した事があった。 展示作家は九州の鉄の造形作家阿部守とガラス作家高臣 大介である。 展示場所の清華亭はかって泉が湧き北大構内を流れる 川の水源となった場所である。 テンポラリースペースはその川筋に立っている。 この展示は今月末から展示の高臣大介「みつめあう。」展 の原点ともなったものである。 その前々年2010年に清華亭に繋がる植物園ー伊藤邸 の泉池の水脈・エルム(春楡)ゾーンで新たに伊藤邸が 高層マンション化する問題が出て、反対署名運動を私は 同士とともに立ち上がらせていた。 西の大倉山から見下ろすと無機質な灰色の石のような 高層ビル群の街に、ひと筋の南北に伸びる緑の帯が見える。 それは大通り公園ー植物園ー伊藤邸ー偕楽園緑地ー清華亭 ー北大構内と繋がる都心に残る貴重な札幌の森と泉の記憶 の帯である。 私達はこの緑の記憶を遮断しない為に「札幌緑の運河エルム ゾーンを守る会」として、高層ビル反対運動を続けていた。 冒頭のヌプサムメム(野傍ノ泉池)とは、この一帯の風土を 表わしたアイヌ語の地名である。 そうした一連の流れの中で、高臣大介のガラス作品は、清華 亭の庭のエルムの巨木等の梢に水滴のように吊るされ展示さ れた。 そしてその翌年の個展「あふれでる。」では、作品はさらに 進化しより太く純粋な水波のようになり、百一本となって 会場中央に吊り下げられた。 その後「ひびきあう。」「とめどなく。」そして今回の 「みつめあう。」に至るまで作品の数は年々増え続け二百本 を超えている。 本人は千本まで目指すと宣言している。 透明で硬質なこのガラスの水波・水房。 器性はなく純粋な形象のこの作品を、今彼はライフワークの ひとつとしているかに思える。 10年前千葉から移住し洞爺湖月浦に工房を構えた彼は、地形 風土の違う新たな天地でその相違に周囲からも自らも意識させ られる事は多々あったと思う。 工房火災の不運もあり経営の苦労もあっただろう。 その中清華亭展示の後、ふっと呟いた言葉が印象に残っている。 泉の温度は変わらないんだって。 人は夏に冷たく冬には温かいと感じるが、泉の温度は いつも常温なんだ。 この時彼は何かを掴んだと思う。 自分は自分であふれ出れば良い。周囲に惑わされず俺は俺の 表現を続ければ良い。 そんな発見・自覚が千本を目指す泉の水波・水の房シリーズ となっていったと思う。 今回初めて器の展示と水波・水房の展示を別けて二部構成と したのもその自覚の顕在を感じる。 さらに今回の展示表題は「みつめあう。」で<みつめあうのは いつも自分自身だ。>と案内状に記している。 かってのヌプサムメム(野傍ノ泉池)から、今ひと筋の川が 流れ出た気がする 千本を目指すように、この川のひと筋もまた太く大きくなって、 世界という大海に向かい流れてゆくだろう。 森を育て土地を潤し大海原の世界へ。 一人の作家の成長は、一本の樹、ひとつの泉のように世界を潤す。 一棟の高層ビルとは対極の位相なのだ。 一本の木が千本の樹を目指すように、千の葉を茂らせれば、 大介よ、千の葉。 君の故郷千葉かもな・・・。 冗談だけど??? *高臣大介ガラス展「みつめあう。」-1月26日(火)-31日(日) 前期・器を中心に。2月2日(火)-7日(日)後期・インスタレーション am11時ーpm7時・月曜定休。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2016-01-16 15:40
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