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テンポラリー通信

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2016年 01月 12日

怒涛の3日間ー土(27)

吉増剛造展終わる。
金曜日予告無しに映像作家石田尚志さんが来廊。
そこから怒涛のように意外な人が訪ねてきてくれ
濃い3日間だった。
吉増展には毎回オープニングに顔を出す石田さん
だが、今年は勤務先の大学の都合で無理と聞いて
いた。
ただ今回の展示は見て欲しかった。
それだけに不意の訪問は嬉しかった。
残念ながら金曜日は夕刻から透析治療で私は席を
外した。その前にモエレ沼公園のイサム・ノグチ
と灯りのコラボ展を終えた高臣大介さんが来て彼と
イサム・ノグチのモエレ沼公園の紹介を石田さんに
告げる事はできた。
横浜美術館、沖縄美術館に続き、札幌での石田展の
場所を模索していたからである。
そして翌日石田さんは余位さんとともに、モエレ沼
を長靴で散策し午後顔を出す。
札幌では3回の個展をしているが、いずれも季節は
夏である。
しかし今回のモエレ沼公園訪問で、冬の展示にも心が
動いてきたようだ。
そんな話をしているとひとりの男性が入ってきて、車を
前に停めていいかと聞く。
その顔を見て石田さんが大きな声を出す。
東京国立近代美術館の保坂健二朗氏だという。
吉増さんの6月予定されている美術館の担当者だ。
今回は「石狩シーツ」の舞台石狩河口を訊ねて来たという。
想いは現実、現実は想いだ。
早速今回の展示で思っていた「怪物君 YY小屋」構想を
話す。
そして吉本隆明を偲ぶ会での吉増さんの挨拶の録音を
聞かせた。

吉本隆明という日本近代の深い底流と吉増剛造という日本
近代のモダニズムの本流とが、「怪物君」という大草稿の
中で稀有な出会いを根を紡ぐように添い遂げようとしている。
そこを是非展示のメインに据えて頂きたい。
そう熱く伝えた。
あっという間に帰京の時間となり、偶然同じ時刻同じ便の
石田さんと保坂氏は空港へと去っていった。

翌朝美術家の中嶋幸治さんがオープニング以来の顔を出す。
彼は吉増さんとの新たな親交を心から喜んでいる。
それも今回の傑作フライヤーがコンセプトを含め高く評価
されたからだ。
そこへひとりの背の高い女性が来る。
じっくりと作品を見ている。
声をかけ聞くと東京からこの為に来たと言う。
吉増さんとはブラジル大使館の縁で日系ブラジル人の作品
解説をお願いした事があると言う。
1994年石狩に数ヵ月滞在し名作「石狩シーツ」を制作
した吉増さんの動機にはその前年までのブラジルでの2年
がある。
故国を遠く離れた移住者が保つ純粋な望郷の国への想い。
その深い純粋なナショナリズムに当時の吉増さんは、自分自身
への日本に深い危惧を抱いていたと想像する。
そして帰国後ブラジルへ発つ前年経験した大野一雄の石狩
河口公演の舞台の傍らに身を寄せ新たな作品制作を試みた
と思われる。
それは自らの蘇生を賭けた石狩行だったと思う。
ブラジル・サンパウロ生まれというその日系女性に大野一雄
の石狩舞踏公演のヴィデオを見せた。
食い入るようにじっと画面を見ている。
私も久しぶりに大野一雄を堪能する。
そして今まで見過ごしていた服装の変化に目が行く。
最初赤い和服の着物の雌鮭は子を産み死を迎える際には洋装の
赤いドレスに着替えている。
そうして見ていると、音楽も津軽ジョンガラとクラシックの洋楽
が交互に流れている。
それらが何の違和感もなく聞き過ごし見過ごしていたのは、圧巻の
大野先生の舞踏の力の所為もあるだろうが、この舞踏の世界では
近代の和と洋が石狩河口の自然の中で、少しの無理も無く一体化して
あったからなのだ。
これだなあ、と思った。
吉増さんが、もう一度自らに確かめ確認したかったもの。
日本のモダニズムの揺るぎない立ち方。
ダンスとはまた違う舞踏という国際語にもなっている大野
一雄の舞踏。
歌舞伎の伝統も含めた白塗りの女装、そして衣装の早変わり。
それらが西洋クラシック音楽と少しの違和感もなく鮭の一生
を演じ生と死の感動を与えていたのだ。
吉増さんの今回村上さんに送られてきた折りたたまれ絵の具
の滲み出た鮮やかな紙に包まれた怪物君歌垣の6個の草稿。
これらはあたかも踊る大野一雄の着る衣装のように、この時
吉本隆明の近代という容体を彩っているものに見えてきた。

ブラジル生まれの平田美智子さんは、半日以上話し見て聞いて
夕刻搭乗時間近く急ぎ空港へ向かい別れた。

濃い終りの3日間だった。
次なる吉増剛造、拠って立つ吉増剛造。
その過去と未来を告げるような訪問者だったなあ。

*高臣大介ガラス展「みつめあう。」前期:1月26日ー31日
 器を中心に・・。後期:2月2日ー7日インスタレーションを主に。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel.fax011-737-5503
 

by kakiten | 2016-01-12 13:12 | Comments(0)


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