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2015年 12月 27日

冬の遺書ー土(22)

1950年から51年にかけて26歳から27歳の
吉本隆明が書いた「日時計篇」528篇を写経のよ
うに、吉増自身の言葉を借りれば筆耕して「怪物君」
の草稿は下書きされている。
その吉本の詩行に、言葉を添え色を付け、言葉を発し、
その過程を自らgozocineとして記録した草稿
が現在700葉弱となる。
吉本隆明の日時計篇162篇目の「冬の遺書」を
朗読し解説した音声が届いていた。
吉本隆明が亡くなって追悼の集まりで録音された
ものだ。
敗戦し復興途上にあった日本が戦後最初に経験する
高度成長期朝鮮動乱による経済特需の年が1950年
である。
現在に繋がる経済先行のバブルへの流れが生まれた
年といってもいい年である。
その時代の岐路で青年吉本隆明は戦中戦後の思想の闇
の中で「冬の遺書」を書いている。
その中の詩行に食い入るように読み解く吉増剛造の
朗読と解析。
そこに戦後モダニズムの天才の時代の基層部に迫る
本当の詩人の姿が浮き上がってくる。

 はるか下のペーブメント

という吉本の詩行に注目し解析し朗読する吉増剛造。
かって朝鮮動乱から始まった高度成長時代に建設される
ハイウエーと呼び、スカイウエーと持て囃された高速道路
時代の到来。
その時代の寵児のように、疾走する詩人と持て囃された
吉増剛造が天空を走るハイウエーではなく、<はるか下の
ペーブメント>という吉本隆明の垂直な地下への思想に
感応している。
手元に日時計篇がないので、吉増さんの朗読を聴きながら
の引用で不充分となるが、

 暗い冬が吊り篭のようにぶら下げた建築物
 
という出だしの詩行は、まるで地下基盤杭打ち偽装の時代を
予兆するかのようだ。
そして、

 こしらえられた影にある暗いひとつの遺書を見よ
 ・・・・・
 愚かな父の遺した遺書は はるか下のペーブメントの上にある

と、戦後高度成長時代の足下に潜む日本近代の亀裂の思想底流を
<父>に象徴し詩行に刻んでいる。
吉増自身の言葉に添えば<一文字一文字米粒を拾うように>
吉本の言葉を読み込み解析している。
今吉増が試みている「怪物君」草稿は、そうした日本近代の
地下底流・伏流水とショートカットされた表川・新川との血ま
みれの闘いの記録なのだ。
この録音を流しながら会場に居ると、その静かな熱い闘いの呼吸
が、血肉に染入って在るように草稿が見えてくる。

*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-1月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休・正月3ヵ日休廊。
 ;参加作家 ぅ鈴木余位(映像)・村上仁美(花)・山田航(歌)
 :フライヤー制作 中嶋幸治 酒井博史
 ;会場構成 河田雅文
+高臣大介ガラス展ー1月下旬前後期2週間

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2015-12-27 15:31 | Comments(0)


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