昨年亡くなった英国の美術家ロジャー・アックリング。
その追悼の記念本が来月頃英国で出版される。
その中の日本でのロジャーの軌跡を担当したMさん
からメールがある。
Mさんは日本女性で英国人と結婚しスコットランドに
住むキューレーターである。
そして今回の本の日本編を真摯に取材した人である。
ロジャーと最も親交のあったコンセプトスペースの
福田篤夫氏を初め多くの日本での関係者を精力的に
取材し、私もその中のひとりだった経緯がある。
来月本が出版との連絡があり、Mさんの取材した分が
不本意なまま何人か削除されていたというお詫びと口惜
しさの滲んだ文章だった。
私へのインタービューは幸い削除とはならなかったと言う。
しかし他の多くの何人かが部分的、全文と相談もなく削除され
口惜しく、取材相手に申し訳ない気持ちが記されていた。
ロジャーの故国英国で出版される本である。
日本編はその中の一地域に過ぎない。
編集上優先順位に差が出るのは仕方が無いのだ。
Mさんの口惜しさを慰めながら、そう伝えた。
そして革めて今回の本が出版された後日本のロジャーとして
独立して本にしてはどうか、と提案した。
日本人であるMさんの英国との繋がりを今回の取材を通して
大きく感じた何かがきっとある筈だ。
それはかえって自立した日本のロジャーとして独立させた方が
より明確になる。
今英国に住むMさんにとっても、日本と英国をロジャーと関わ
った人と共に考える良い機会ではないか。
今回の悔しさをバネに取材されたみんなも協力して、是非
実現させようと提案した。
スコットランドに住むMさんが、そこで経験したロジャー・
アックリングを通して感じた遠い日本。
それをロジャーからの贈り物として彼女自身の形にする事。
それには今回の出来事は大いなるチャンスである。
そう思う。
私はコンセプトスペースの福田氏とも協力して応援したい
と記し返事を送った。
そういうロジャーの追悼もあっていいと思う。
個々のそれぞれの場で、作家もまた独立し自立して作品を
その場所で創作したのだ。
Mさんの真摯なインタビューは、Mさんのロジャーを媒介
・レンズにしたMさんの日本という作品なのだから。
*吉増剛造展「怪物君 歌垣」-12月15日(火)-1月10日(日)
am11時ーpm7時;月曜定休・正月3ヵ日休廊。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503