2日目午後5時からの教育文化会館天川彩「Hopi」特別
講演会には残念ながら出席できず、展示会場にいた。
先に来ていた佐佐木方斎と6時過ぎ画廊を出て、瀬川葉子
展を見に行く。
瀬川さんの新作展で、方斎と一緒に来て欲しいと以前の
方斎展に瀬川さんが来てくれた際約束していたのだ。
それが偶然この日となった。
瀬川さんの作品は明らかに深化していた。
会場のカフエギャラリーの青い壁に秋の彩葉が舞っている。
それも従来とは違うファイルならぬ額装の展示だ。
それだけ作品が自立性と独立性を堂々と主張しているが、
一方で変わらず優雅で色彩がより深く沈んでいる。
裂いた紙の切れ端の触感が枯葉のように乱舞し、渦巻く。
そしてある抽象を獲得している。
大作のモノクロームな作品は、濃い青い壁一面に額無しで
流れるようなフォルムで展示され存在感がある。
良いなあ、と方斎と思わず目を合わす。
程なく瀬川さんも見え話し込む。
その中で”これ、私最近家の机の小さな凹みから創ったの”、
と言って透明なビニール袋に収めた小品作品を我々に見せた。
方斎が手に取り裏表を眺め言う。
うん、これこの青綺麗だ・・・。
日常の机の上の小さな傷痕。
そこに好きな紙切れを当て、組み合わせ構成した髪の薄い
彫刻のような立体である。
これは薄い紙故に、裏からも表からも光に透かす様に見る
事が出来る。
一種の筒の無い万華鏡のように不思議な光と紙の立体彫刻
ともいえる。
これ、俺買う、と方斎が急に言う。
瀬川さんが目を丸くした。
今色彩が浮上したテーマとしてある方斎氏に、なにかが閃いた
のだろう。
作家が他者の作品に惚れるという時は、そういう時である。
谷口顕一郎が瀬川さんの作品を購入し、その作品へのインスピ
レーションから新たな作品を創ったのもそうした例である。
さらにその谷口作品を瀬川さんが自分のものとすると決まる。
ここには作品を通して交感する作品空間の磁場が生まれている。
物流だけに矮小化されない、本来モノが保つタイムカプセル
のような力だ。
私はその時明日までで終わりの「Hopi」展のカチーナドール
を瀬川さんに見て欲しいと思った。
そしてなんとか時間を見て行くと承知してくれた。
そしてこの訪問は予感を超える出会いともなった。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503