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2015年 10月 27日

自転車モダニズムー空(12)

一昨日夕刻の及川恒平・山田航ライブは、初雪降る
悪天候の中聴衆は少なかったが、濃い内容のものだった。
歌人山田航が自転車をテーマに長歌を朗読し、その歌に
及川恒平がメロデーを乗せ唄った。
山田の歌には萩原朔太郎が顕れ、当時のモダニズムの
最先端として自転車が登場する。
以前に存在しなかった自転車という近代。
その近代の象徴として自転車がある。
今年から生まれ故郷の北海道を主にして、自らの演奏
活動を志す及川恒平にとって、前回の二本のポプラに
続くテーマである。
明治に輸入され地元に根付いたポプラ。
大正時代に庶民に根付いた自転車。
このふたつの身近な近代を北海道そのものに引き寄せ
自らを問う、そんな姿勢が今回もふたりのライブの
基調低音・トニカとなっている。
そして長歌という短歌に先行する長い詩行形式が、高い
山の長い裾野のように自転車登場の時代の裾野を今に
問うのだ。
この長歌の保つ伝統的な構造性が、及川の歌う姿勢をある
凛とした垂直に立つ軸として歌を浮かびあがらせていた
ように思う。
従来の柔らかさ、優しさ、透明感に加えて、より透徹した
思想への目のようなものが中心にあった。
それは日本の伝統的な和歌の構造と、フォークソングとい
う現代の歌唱スタイルが、北海道という近代と縄文の集約
する場で、自転車という身近な近代をテーマとした事で、
北海道を場として歌う本質的思想性・構造性を問いかけて
いたから、と思える。

言葉の根底を支える韻律。
五・七・五・七の韻律の続く長い裾野のような長歌。
そして反歌として七・七で完結する短歌。
この長い時間を経た典型という様式構造。
唄うスタイルは時代とともに種々様々であれ、営々と
して根底に構造化されたものである。
そこに近代という西洋・他国の構造があっという間に襲来した。
歌の世界だけでは勿論無く、文化の全容に渡ってそれは今も
続いている。
寸法・尺度と言いながら、実際は基準を変えて使うのがその
いい例でもあるだろう。
一升は1・8リットル。一坪は3・3平方メートルである。
歌う言葉にも同じ危うさがある。
北海道で生きるという事は、近代そのものを近代として検証し
真摯に見詰める事だ。
及川さんが直面し対峙したのは、その精神だっただろうと思う。

彼の凛と感じられた唄声の響きには、この北の地でしか達せられ
ない透徹する抒情の光が潜んでいたと思う。

*Hopiショップ「Sun&Rain in札幌」-10月30日
 -11月1日。am11時ーpm7時。10月31日午後5時まで。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2015-10-27 17:08 | Comments(0)


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