風雨強い中、風のように人がふっと来る。
写真家のT氏、車で通りすがりのAさん。
美術評論家のK女史、公務員のYさん。
見ず知らずのAさんは、好奇心旺盛で展示作品
は勿論昨年制作の版画集「部分群」に1980年
代制作の「格子群」「余剰群」「自由群」すべて
を見ていく。
その度の反応が面白かった。
攻撃的、可愛い、綺麗・・・。
女性特有の感覚的表現である。
しかしその波長は的確に佐佐木方斎の絵画変化を
捉えている。
40有余年の絵画に表れた絵画と生の変遷を堪能し
改めて今回の42年前の3年に及ぶ絵画の原点を
見詰めている。
その後の展開の萌芽がそこにある。
感動したようだ。
写真家のT氏は、ぽつりと一言。
この絵に囲まれて暮らしたいなあ~。
長年勤めた会社を辞め今月からフリーで写真主体の生活
に入ると聞くT氏の心に絵画の色彩とフォルムが木霊し
ているようだ。
正に佐佐木方斎がこの絵画を描き続けた3年間は、生活の
転位を決断した逡巡と決意の狭間の時間だった。
T氏の今と重なる逡巡と決意の境の時間なのだ。
談話室でT氏は最近の愛嬢の話をする。
高校進学に全寮制のある地方高校を希望していると言う。
周囲には森しかない自然に囲まれた生活。
そこを敢えて希望する強い風土との交感と自由への渇望。
T氏が職を離れカメラで生きていく契機となったのは、
ニューヨークの路上での露天売りだったと聞く。
親子揃って土に近い地べたに根ざす生き方の選択である。
地軸を軸とする縦の天地。
横軸にどんどんすごい速さで変化する都市の時代速度に
逆らうような生き方。
方斎の42年前の作品は逆に時代に追いつき、時代に根を
張らんとする自らの磁場作成への熱い欲求だったと思える。
その彼の生きた時代が縦軸の土だったのだ。
そうした時代の違いを超えて、個が自らの生の基盤を構築
せんとする精神の根の志向性は響きあうものがあるのだ。
これに囲まれて暮らしたい、と呟いたのはその直感だと思う。
この日を総括するように、K女史とYさんが来て、優しく
そよ風のように作品たちを称え、この日の終わりを縁取って
過ぎていった。
*佐佐木方斎展「Housai’s Early worsー1972~1974」
10月18日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
*及川恒平・山田航ライブ「こえのあるいっとき」-10月25日(日)午後5時
予約2500円。
*HOPIショップ「Sun&Rain」10月30日(金)ー11月1日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503