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テンポラリー通信

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2015年 08月 26日

岳樺ー窓(28)

展示の為の素材を山に探しに行った村上仁美さんが寄る。
朝里岳の方面に行って来たという。
凄かったわ、と岳樺の話をした。
亜高山地帯に立つこの木には記憶がある。
何年も前早春の朝里岳頂上近くに通い詰め、岳樺の雪解け
とともに表われる全貌を見続けた記憶だ。
樹木の版画を描き続けているF氏を案内し同行した結果だ。
強風と高地の所為で低く枝が地を這い、雪面に出ている枝は
山スキーで訪れた時はちょうど一休みするのに都合の良い
腰掛けのような状態だが、雪解けとともにそれは大きな木の
梢であってやがて奇怪な横に広がる全身を露にしてくる。
その姿を画家は葉の茂る前スケッチし作品に留めたかったのだ。
そのお供に何度も通ったのである。
結局この画はある事情で完成されなかったが、そのスケッチの
最終的なものをカメラに収めてある。

岳樺、アイヌ語でカムイタッニー神の皮の木。
平地の白樺などとは違い、荒々しく豪快で凶暴なその姿は正に
カムイの名に相応しいものがある。
高山の森林限界線に生える最後の樹木。
その上は這い松と笹藪が広がる。
その過酷な世界で光を求めて風と雪に対峙し、のたうつ様に
枝が伸び幹が支える。
まるで地中の根の先がそのまま顕現したかのような姿である。
根は水という光を求めて地中に根を張り、梢は光という水を
求めて空に根を張る。
そんな地と天を繋ぐ樹木の強烈な生命力を感じさせるのである。
Water Fallー今回の展示のテーマの素材を求め使えるか
どうかは未知だが、村上さんが岳樺に感動したのは分かる気がする。
滝という水の根と木という光の根が、きっと同じ位相で顕在化し
表出して感じられている筈だ。
すっと素直に伸び美しい曲線で梢・枝が広がる世界ではなく、
耐えに耐え命の禍々しさそのまま剥き出しの強烈さで這うように
立つ。
そこに今回のテーマの<Fall>の力を見たのだろう。
地を這い、空に這う。
Fallとは光と水の天地の回路の事だ。

展示前に私の中ではすでに妄想が膨らんでいる。
それがどう変わり、どう響きあうか。
見る者と創る者との作品を境にした対峙の時間は始まっている。

*村上仁美・高臣大介展「Water Fallー花とガラス」ー9月
 1日(火)-6日(日)am11時ーpm7時

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2015-08-26 14:06 | Comments(0)


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