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テンポラリー通信

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2015年 07月 16日

瀬戸際ー窓(6)

自然も人間社会も速度を上げて混乱を招いている。
そんなニュースが報道を埋めている。
速度を上げ台風と猛暑が押し寄せ、国会では法案
の早期通過を与党が強行採決する。
ロンドンや北京の競技場の何倍もの建設費で新国立
競技場を東京オリンピックの為日程を急ぐ。
大事から日常のインフラまで速度を上げる事に急な
事ばかりの世の中だ。
生活のインフラ・公共料金の支払いも、待った無し
で追いかけてくるし、日々の生活でも瀬戸際が続く。

そんな中、瀬川葉子さんの個展展示が始まる。
家事育児に終われ作品製作を一時断念していた瀬川
さんが、日常の中で生まれる雑紙を素材に作品を発
表しだしたのはもう4,5年前だったろうか。
作品は深化し、今回の展示は新たな立体の感がある。
それも美しい光と造形の羽葉のように軽やかな美である。
葉子さんという名前から学生時代、幼少期までハッパ
ちゃんと呼ばれていたあだ名がそのまま甦り、作品化
したかのような透明な可愛い美に満ちている。
見る人は文字通り、ひとつづつ透明なファイルに収納さ
れた作品を木の葉のように手に翳しながら光に透かせた
り、裏を返したりして見る事ができる。
ここでは速度に追われる時間はない。
しかし光は時間とともに移り変わり、作品もまた変化する。
強行するものは何も無く、掌の光の物質が光とともに変化
する漂う時が過ぎるだけなのだ。
「FOLE」と題された今回の作品たちは、瀬川さんから
贈られた雑多で多忙な速度に支配される日常を、ふっと翳す
行為で超日常へ変化する色と形の光の贈り物ともいえるだろう。

作品展初日前まだ展示途中で発語するべきではないのかも知
れないが、今日の美しい光と世の内外の速さの猛威に思わず
呟いてしまった次第である。
スピードは時として破綻の瀬戸際をしか生まない。
芸術文化は、その猛速に対峙しストップ・停留所を設ける
役割がある。
スピードアップではなく、ストップアップなのだ。
台風がそよ風となり、熱い光が木洩れ日となる時間である。
それは強行や強制の<強権>の時に抗う力を呼び覚ます。

瀬戸際の時間の続く自分にも、瀬川さんを始め多くの人に
公私共にこうした時間を頂いた。
心から感謝なのだ。

*瀬川葉子展「FILE」-7月21日(火)-8月2日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2015-07-16 17:19 | Comments(0)


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