人気ブログランキング |

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2015年 06月 10日

鎮守の森ー屋根(14)

大正生まれの亡き父の小さな絵画を見ながら、ふっと
浮かんだイメージがあった。
これは大正時代に青春を過ごした父の時代の鎮守の森
近代の社(やしろ)だな、という感想である。
5,6階建ての札幌軟石とも見えるくすんだビル棟、その前方に
緑の塊のような低木と左画面端から伸びる葉の落ちた高い木の
梢と枝。
何も無い原生林と湿地帯の北海道石狩平野を開拓し、近代のロマ
ンである洋風建築物が林立しできた札幌という都市。
植物園がかっての原生林をそのまま囲い植物園としたように、
厚く残る自然と近代の象徴である方形の石造りの建物。
これは明治から大正にかけて形成された新たな夢の里だったの
ではないだろうか。
都市と森の共存するモダーン鎮守の森だ。
明治以降に拓かれた新しい都市の里山・都・山のような本州には
数少ない風景である。
急激な西洋化、近代化がもたらした束の間の夢の都市。
その象徴を大正生まれの父は、青春の只中描いて残したよう
に思う。
美術志望の夢も叶わず、東京へも行けず、しっかり者の厳しい
祖父の下で家業を継がされ眠った夢は戦後華道の世界で夢開く。
勅使河原蒼風や中川幸夫たちのリードする新しい活け花の美術
活動に協賛し、青春の夢を花開かすのである。
大正という開かれた時代が育んだ近代の夢・札幌の原風景。
それは森と都市が眠る近代鎮守の森のような都市と自然の
調和への祈りのような風景だった気がする。

戦後訪れた束の間の青春の夢も間もなく去り、札幌オリンピック
の名の下、街は先鋭なビル化ラッシの時代を迎え、墓地を削り
神社を分断し山地は後退して自然は喪われていく。
そうした時代の前夜に死した父の原点は、この一枚の小さな絵に
残されている。
そしてそれは札幌という都市が生んだ原風景・故郷とは何かを、
今も私達に問いかける精神の遺産のひとつなのだと私は感じている。

*佐佐木方斎展「Primary Painting」^6月14日(日)まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503、

by kakiten | 2015-06-10 14:01 | Comments(0)


<< 遺さねばならぬものー屋根(15)      水・空気・光ー屋根(13) >>