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テンポラリー通信

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2015年 05月 06日

ロジャーアックリングの思い出ー斜道(21)

二日連続で谷口顕一郎・彩子さんと山田航さんが来る。
凹みの探索に今日は円山川源流沿いの不動の滝を
尋ねたという。
ちょうど咲いたばかりのシラネアオイに彩さんが感動し
ていた。
7月個展に向けて順調に琴似川の支流域でも新たな凹み
を採取しているようだ。
古いヴィデオ録画「札幌水物語」を見せている内に秋元
さんがスケッチブックを携えて来る。
先日茨戸の二本ポプラを見に及川・山田さんと同行し
描いたスケッチである。
先輩である谷口さんに見られる事に照れながら、お披露目
する。
前を歩く及川・山田の向こうに二本のポプラが見える。
そしてポプラの傍のふたり。
それがあるストーリー性をもって5枚ほど描かれていて、
なかなか良い感じである。
これをライブ会場の壁に展示しよう、という事になった。

谷口夫妻・山田さんが帰って電話が鳴る。
昨日留守録にあったイギリス在住のフリーランサーの女性だ。
先年亡くなったイギリスの美術家ロジャーアックリングの追悼
本の日本担当面の編集者で、以前石狩・望来でロジャーが
レジデンス制作し発表した頃の事を取材したいという事だった。
ロジャーとしては異例の夫婦での一週間に渡る滞在制作。
そのドキュメント記録誌発行とテンポラリーでの作品展示。
その頃の空気が話している内に、次々と蘇ってくる。
話は尽きず、相手の方もどんどん興奮して閃いてきたようだ。
30分以上話してまた改めてという事で電話を切る。

初めて会ったロジャー・アックリングが心を開いてくれた理由は
場という事に尽きると今思う。
故郷の英国にあるドーバー海峡を想い起こさせる望来の崖壁。
レンズに太陽光の光を集め、拾い集めた流木にその光で彫刻
を刻んでゆく制作行為。
光と水と空気が純粋に濃くなる望来海岸。
そこにはロジャーの作品製作の全ての環境が揃っていた。
さらに当時滞在した山本旅館の娘さんは、英国滞在の経験があり
、ロジャー夫妻の為に毎朝パンケーキを作ってくれたという。
後日ロジャーが嬉しそうに語っていた。
故郷の海岸に似た白い崖の風景、そして作品製作に欠かせない
太陽光と素材の流木が日々流れ着く海岸。
幸せな滞在の一週間だったに違いない。
その結果が異例のテンポラリーで全作品展示とドキュメント制作を
両方可能にしたのだ。
私は私の生きている場から石狩の海への道を回路として探ってきた。
その流れの中で今は亡きプラハプロジェクトの大橋氏とともに、
ロジャーレジデンスの企画に関わり場を提案し実行したのだ。
高名な美術家として名前と作品制作の特徴は知ってはいたが、
会うのは初めてだった。
しかし彼は非常に自然に対し素直で激しい感性を保っていたので、
私達が案内した石狩望来への全ての道にすぐ共感し反応してくれた。
この土地という場が友情の架け橋になってくれた事は間違いない。

その事を今懐かしく深く、追悼の気持ちとともに思い出していた。

その後石狩で長年待望の八つ目鰻を食べたという熊谷氏が来る。
江別在住の秋元さんと暫し話が盛り上がる。
これも石狩河口ー江別港の場が繋ぐ心の端だなあ。
そして帰り際、瀬戸君が来て、中嶋君が来る。
ふたりも熊谷氏も谷口さんに、しきりに会いたがっていた。

人の心の往来激しい一日。



*及川恒平・山田航「二本のポプラをめぐる二つのうた」
 5月16日(土)午後5時~予約2500円

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2015-05-06 13:56 | Comments(0)


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