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テンポラリー通信

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2015年 03月 28日

柔らかな風ー歩行(24)

春を告げるような優しい風が吹く。
光も水も緩む。
女性達の内臓的言語で言えば、”カワイイ~”季節である。
これが春一番の強風や寒気の到来となれば”コワ~イ”と
なるのだろう。

羆もそろそろ冬眠から目覚め近隣に姿を現す頃だ。
最近白熊が高値で動物園に売買されていると聞く。
白熊は女性や子供に人気があるという。
これもカワイイ~の為せる人気だ。
地球温暖化で白熊の数が減っているというデーターもあり、
その意味ではコワ~イ話でもある。
可愛い花嫁が頭に角隠しをするのは、そうした自然や野生へ
の先人たちの知恵だろうか。
アイヌ語でもカムイとは神性と魔性の両方を表す。
カムイワッカとは澄んだ毒の水を意味する。
楯の両面のようにカワイイ~とコワ~イは水にも光にも風にも
当て嵌まるのだ。

先日尋ねてきた作者の友人という女性がいた。
元気な人で梯子を身軽に昇りじっと下の鉛筆画を見ている。
傍に行き声をかけ作品の感想を聞いた。
以前作家から絵画を見せてもらった事があるという。
その時も驚いたが、今回来てさらに感慨を深めたという。
命をラップした切り身の魚。
その向こうに生命の鼓動を描いている。
そんな話をした。
色々話している内に頭が前に俯き、目が涙目になっている。
なにか人生上の経験で心に響くものがあったのだろう。
身体の部位毎に切断され、切り身として透明なラップに包まれ
販売される。
その部位の向こうに在る命をこの鉛筆画が描こうとしている。
その意思の力に彼女は心打たれたに違いない。
1階の蛸足、鮭の身、海老の全身。
そして2階正面に鯛の頭部が目を開けて2つ並び、もうひとつは
頭の無い海老の身。
その左北壁には色鮮やかなカラーの花の写真が並んでいる。
下と上の作品構成の違いは、作者の精神的な身体性の位置でもある
のだろう。
見詰める現実と見詰めている心の位置だ。
位置というより位相といっても良い。
書の方の配列にも同じ事が言える気がする。
臨書と呼ぶ名立たる書家をお手本とする書。
5本の掛け軸に書かれた5種類の臨書に対峙するように砂漠の
ような荒れた大地の岩山に斜道を貫通させ祝った記念碑の碑文。
そこにはその地に生きる人々の誇りと喜びが感じられ、風景さえ
も見えるような素朴な文字である。
対面する5本の掛け軸に匹敵するような大きさでこの文字を選び
展示した意図には鉛筆画と同じような無名の生命への作家の意思
が篭められていると思える。
2階北に飾られた花の写真21葉は彼女の心の炎でもあるだろう。
そしてその炎は現実の透明なラップで分別された切り身の命を
燃えるような視線で見詰めている。
生命を愛しむ心と分断され切り身とされた現実の間を見詰める。
それはコワ~イとカワ~イイのどちらにも流されまいとする強い
意志が彼女の作品力を支えている。
高向彩子書画展は書道・絵画・写真というジャンルで語られる
べきではない。
作家自身が日々感じた現代への批評精神の顕現として、そのナイ
ーブで強い心の発露として感受すべきなのだ。

涙目をした先刻の女性はなにか吹っ切れたような表情で帰っていった。
その微かな満足感、何かを埋めたような満ち足りた表情が全てを物語
っていた。良い個展である。

*高向彩子書画展ー3月24日(火)-4月5日(日)am11時ー
 pm7時;月曜定休。

 テンポラリースペースっ札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2015-03-28 14:45 | Comments(0)


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