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テンポラリー通信

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2015年 03月 22日

展示中ー歩行(20)

高向彩子さんの展示作業が始まった。
最初に大きな石碑の碑文の書が飾られた。
中国後漢の時代、斜道の開通を称えて彫られたものという。
時を経て忘れられ見捨てられていたのを、後世再発見
され修復されて今は博物館に保存展示されていると聞く。
漢文の一見稚拙とも見える文字だが、道を切り開いた
人の喜びが道の向こうの風景と共に目に浮かぶような
活き活きとした筆跡の文字だ。
部分的に読み取れる一文字一文字がその喜びと興奮を
伝えてくれる。
これは決して皇帝とか偉い人を称える碑文ではない。
むしろ無名の道路開拓に関わった人々の開通の喜びが
全体から伝わるような字体と文字なのだ。

パックされた切り身の魚介類を元の生き物として
その生身を彷彿とさせる鉛筆画に描く高向さん。
彼女が書を通して見詰めているものもやはり書の向こう
にある生々しい人の生活、生き様である事が良く解る。
書とか絵画を問わず高向さんの表現の核心には、生き
ている物への時代や生物の分類という分別のベールの
向こうにある生命への関心・愛着ではないかと思える。
鉛筆で細かく大胆に描かれたスーパーの切り身。
透明な膜に包まれた蛸や魚。
それらが鉛筆とは思えぬ生々しい感触で、生きた色彩
をも感じさせるような存在感を保って表現される。
この鉛筆画の感性は多分書とも共通する描線と白黒の
彼女の描彩なのだろう。
芯の強い人である。
まだ若いだけにそうしたジャンルを問わず自分を主張する
事に警戒心も強い。
書画展という平凡なタイトルにもその用心深さが出ている。
当初は「汽水」という境界を表すタイトルだったが、それを
止めて書画展とした経緯にもそれがある。
しかしDMに蛸の鉛筆画を載せデザインした中嶋幸治さんの力
で、この展覧会の真の意図は見事に伝えられている。

少し及び腰ながらも、凛々しく初々しい船出。
全ての作品を並べ終った時一番最初に満帆の喜びを堪能する
のは、他ならぬ作者本人である事は間違いない。
展示された作品群の内に新鮮な自分を見つけ、他者と共に分か
ち合う脱皮した自分がいるに相違ない。
それは恰も彼女の描く透明なラップに包まれた切り身の魚介が
その分類・差別から解放されるように・・・。

*高向彩子書画展ー3月24日(火)-4月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fac011-737-5503

by kakiten | 2015-03-22 13:36 | Comments(0)


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