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テンポラリー通信

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2015年 03月 17日

少年と少女ー歩行(15)

通院しながらふっと昨年11月頃の初めて病院へ辿り着いた
道での出来事を思い出していた。
気持ちは別にして身体はふらふらと歩は進まず2時間近くも
歩いていた。
途中下校時の小学生の群れが通り、その中の一人の少年がすっ
と傍に来て下から見上げるようにじっと見て、声をかけた。
”珈琲でも飲むか・・。”
あれは一体何だったのだろう。
少年が肩に手を掛けんばかりにして発したものは・・。
今でも不思議な親愛感と一瞬の驚愕を思い出す。

遠い昔私はある家を探し見知らぬ街の郊外を歩いていた。
心にはある決意とそこで言わねばならぬ言葉があった。
もう社会的に決まった事でひっくり返すのは至難の現実だった。
それでも自分はその初めて訪れる家で言わねばならなかった。
あなたはその結婚をするべきではない、と。
その時路傍でふっと目のあった少女を今思い出す。
微かに身を捩じらせ見上げた姿。
ひたすら自分の思いを伝える為に歩いていた自分に、この少女は
何かのエールを送っていたように今思う。
あの幼い媚態のようにも見える姿が、何十年も過ぎて今は少年の
声と重なって語りかけるのようにあるのだ。

ある辛いものを心に身体に抱いて、しかし歩行の意思と精神は真
っ直ぐに目的へ向いて歩いていた。
そうした素裸の精神のような状況に真直ぐに反応したのがこの時
の少年・少女だったような気がする。
あれはエールだった。
20代の初めに会った路傍の少女。
そして何十年も経て会った路傍の少年。
歩行の目的は違うけれど、歩行そのものの純粋行為に反応したの
だろう。
遠い初恋の歩行には少女の記憶があり、病の歩行の記憶には少年
の記憶が刻まれる。
少年は”珈琲でも飲むか・・”と声を掛けたけれど、あの時少女
は何と声を出そうとしたのだろう。
きっと声はなく、あの脳裏に今も微かに残る幼い媚態こそが声だっ
たのだろう。

”しっかりね、ちゃんと口説くのよ・・”

*高向彩子書画展ー3月24日(火)-4月5日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/ffax011-737-5503

by kakiten | 2015-03-17 13:01 | Comments(0)


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