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テンポラリー通信

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2015年 03月 09日

刻む時・経験する時ー歩行(9)

10年前の谷口顕一郎・彩子さんの稚内ーサハリンーシベリアー
欧州の旅を思い出し、時について考えていた。
津軽海峡と同じくらいの距離だろうか、もっと短いかもしれない
稚内とサハリン。
そこを渡りシベリア大陸を陸路で欧州へ。
この旅でふたりが経験した国境を繋ぐ地続きの時間と分・秒刻み
の南回りの空路との時間質の差。
一方はトナカイや少数民族や風土といった全身で受け止める大き
な時間軸が流れている。
もう一方の空路の時間には速度だけが短く早く流れて雲の上を
飛んでゆく。
陸路では大きな時間が身体全体を包み、光・空気・人・動物・食物
と五感全部に様々な記憶を刻んでくれる。
きっとある時代まで人間は時間に対してそのように全身で感じ、ア
バウトな時を過ごしていたに違いない。
季節の変化、月の満ち欠け、植物の成長・・・。
だから時はゆったりと綾なすように流れ、速さだけを増幅する事は
無かった筈だ。
時は流れであって、時は刻みを数える間ではなかったはずだ。
時の刻む速度だけが観念的に拡大・増幅されて、時間は短く窮屈
な姿を見せている。
谷口夫妻のあの10年前の旅は、ぎっしりと豊かに詰まった時間軸
を保った旅だったと思う。
4、5年前ここで今村しずかさんのライブがあり、彼女が歌った中島
みゆきの「糸」という曲を聞いて涙を流していた谷口夫妻がいた。
ドイツでもふたりでよくこの曲を歌うのだという。
あなたは縦糸で私は横の糸。そんな歌詞だったと思う。
国境を越えて人と人が繋がり、国境を越えてふたりは異国で繋がっ
て生きている。
そんなふたりの想いがこの歌に涙させた理由だろうか・・。
この「糸」とはふたりが経験したあの陸路に流れていた<時>と
いう<糸>だったのではないだろうか。
路面や壁に時の経過とともに生まれた亀裂。
それをテーマとする谷口顕一郎の作品の背後には、亀裂と対極の
この糸のような繋がり・継続が熱く深く潜んでいると思う。
国境という人為的な境界もまた亀裂の一つなのだから。
その国境をふたりは二本の細い糸のように繋ぎつつ時を重ねていった。
ふたりの間を流れる時も埋めて、繋いで・・・。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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by kakiten | 2015-03-09 14:52 | Comments(0)


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