吉増展最終日の夜。
自然と人が集まる。
最後の展覧会へ向けてヴィデオをドイツから帰国中
の谷口顕一郎さんと見ていると、ちょうど吉増さんが
”ブンタ!”と呼びかけている時に酒井君が来た。
彼はいつの間にか通称ブンタに吉増さんの中でなつて
いて、これには訳がある。
会う前酒井君の職人的な活字の仕事や文章を読んで
いつの間にか吉増さんの中で菅原文太のような風貌が
イメージされていたらしい。
それが実際に会った時、それとは正反対のぷっくらした
太目の童顔だったので、思わず発した言葉が”ブンタで
ないのか!・・”だった。
それからいつも酒井君の事を呼ぶ時は、ブンタという
呼び名になっている。
谷口さんとはまだそんなに会っていないから愛称はない
けれど、我々の間では通称”ケンちゃん”である。
また彼の後輩達は”ケンさん”と呼んでいる。
ブンタにケンさんと一時代を代表するふたりが揃った事
になる。
酒井君と吉増さんが電話で話し間もなく中嶋君が顔を出す。
もうひとりの今回の主役マサさんこと河田雅文さんと村上
仁美さんは、仕事で来られなかった。
ふたりは火曜日に搬出作業をしてくれる。
私は右手首の骨折で作業に従事出来ない。
そして今日無事作業はふたりの力で進む。
今回協力してくれた額装作品の萬鉄五郎記念美術館への荷造
りを終えた。
長いようで短い充実の吉増剛造展だった。
なによりも作家本人の熱い思いが今年年末の次へのステ
ップとして発露された事だ。
今回を当初ラスト展として、最終講義まで組み込まれて
いたにも拘らず、さらなる展開を今会期中初めに宣言し
たのだ。
10枚近くに及ぶ制作ヴィデオを通してその最後を飾った
この場への呼びかけの映像と音声にはその熱い思いが凝縮
している。
みんなへの感謝の言葉と同時に”花の根の心”というヒト
ミさんへのメッセージに、それは集約されるだろう。
場を通して多くの人との繋がりを得た事が、次なる展開を
生んだ事は間違いない。
それは素の自己表出に徹した作家の無冠の栄光の喜びである。
その喜びの感情が今年最初で今展最後のヴィデオレターの声
の音が彩っている。
*高臣大介ガラス展「とめどなく」-1月20日(火)-25日(日)
am11時ーpm7時。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel.fax011-737-5503