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2014年 10月 30日

動・住・民ー戸口・神無月(16)

移動し移住し移民する。
それは人類の長い歴史そのものでもあるだろう。
個人のレベルにおいても、それは結婚・就職といった形で
為される事だ。
北海道に生まれた我々はその意味では最も近い過去の移民
を経験している人間のひとりである。
現代は移動の<移>が現象的には当たり前のように一般化
しているが、その分本質的な根の部分にあたる<住>と<民>
が<移>の方に吸収され希薄化している現実がある。
<移る>自体は結果現象であって、本質的には動くという意志
に住むという生活行為が加わって<移る>は完結するのだ。
秋元さなえさんが、江別という生まれた土地から「橋を渡って」
川向こうの異郷を見詰める視線と行為はそうした<動>と<住>の
意識を深く溜め込んでいる所為と思える。
ただ単に移動するだけなら、橋を渡ってしまえばそれで済む事で
あるからだ。
飛行機でも車でも徒歩でも移動の手段は幾らでもあるのが現代
である。
そうした世界をグローバルに繋ぐ回路ではない固有の回路をどう
獲得するかという葛藤は、表現者固有のものと思われる。
そしてその欲求はより本質的な生きる行為の回復への願望にも
裏付けられていると思う。

作家自身が生まれ故郷江別の地名、<イ・プツーその・入り口>という
アイヌ語の意味を実践しようとしているのかも知れない。
そしてこれから掴むだろう新たな<住>の行く末を作品とともに見守っ
ていきたいと思う。

*秋元さなえ展「橋を渡って」-10初28日(火)-11月8日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*山里稔と木彫りの熊展ー11月18日ー30日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2014-10-30 12:58 | Comments(0)


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