中嶋幸治展「風とは」始まる。
台風が遠く南海を北上する中、暖かく澄んだ青空が広がる。
凛とした束の間の秋に相応しい凛とした展示。
製本された12冊の紅・白・黒・灰色の本が3台の白い机
の上に置かれ、中には美しい紙片の造形が綴じられている。
花弁の蓄積のように一片一片に彼の時が詰まっている。
製本されたこの冊子は見学者が自由に触れて自らも書き込む
事が出来るようになっている。
2階回廊と1階壁には、これまでの個展作品の一部が並び
今までの作家の軌跡を俯瞰する事も出来る。
他者との回路を作品を通して創ること。
そんな繊細な回路装置を花弁のように繊細に重ねて創って
きた作家の青春が、ほっと息を吐き出しているかのようだ。
深く息を吸い込み閉じて溜めて放つように、これまでの生の
時間が作品の間に漂っている。
津軽の林檎皇子中嶋幸治の札幌へのラブレターが、応えを待
ってまっさらで佇んでいるかのようだ。
12冊の美しい製本は、何日も徹夜して仕上げた3台の白い
机の上に触れる手を待って、凛としたお迎えの台座のように
黒い床に鎮座している。
これからの2週間に如何なる風の指が触れるのか。
そしてそれらは如何なる世界を生むのか。
津軽と札幌の風の花弁の純粋な交流が新たな風となって蘇生
する事を祈る月夜の神殿のような展示だ。
*中嶋幸治展「風とは」-9月23日(火)-10月5日(日)
am11時ーpm7時:月曜定休。9月27日午後2時~3時
古舘賢治&本間洋佑ライブ・無料。
*メタ佐藤写真展「光景」-10月7日ー19日
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503