夏の終わりのように雨が降る。
風も出て横なぶりに雨滴が舞う。
もう秋の空気だ。
札幌市の広報誌9月号に「絶対に見ておきたいアート作品
の数々」という札幌国際芸術祭の特集記事がある。
全部で7作品が紹介されている。
24台の電動ロボットによる壁絵、道路の凹み彫刻、器の
ひび音、くもの巣、大岩石、電磁波の画像・音声、インドの
鍋・皿を組み合わせたオブジェ等の7作品だ。
展示場所もチ・カ・ホ、アカプラ、モエレ・ゲイモリ・キンビ
500m美術館となっている。
チ・カ・ホとは地下歩行空間の略で、アカプラとは赤レンガプ
ラザの略称である。以下ゲイモリは芸術の森美術館、キンビは
道立近代美術館、モエレはモエレ沼公園ガラスのピラミッド、
500m美術館は地下通路の500m展示スペースである。
こうして書いているとこれらがすべて<and>で並んでいて
場所も愛称に縮められてなんとも軽いのだ。
これにコンサートホール・キタラやツドームも入れば、札幌の
公共文化施設駄洒落愛称勢揃いとなるだろう。
何をもって「絶対に見ておきたい」と決めるのか分からないが、
個々の作品というよりもお薦めメニューのandで羅列した素材
の多様さと場所の省略化した軽さしか伝わってこないのだ。
正に500m美術館と同じ構造の並列化<and>の連鎖である。
百年の時を経た時計台の窓が保っていた深い空。
そのような界路を垂直に経験してこそ作品の意義がある。
それは<and>で羅列されるものでは決してない。
今月末にこの芸術祭が終了した時本当の総括が問われる。
<and>ではない、個々の作品への真の評価が。
文化事業の広報としてではなく、作品が真に札幌という場に
棹差したかどうかという問いである。
その時個々の作品は初めてその真価を問われるだろう。
それは<and>祭を超えた垂直な軸心を、作品が穿っていた
かを問う事である。
*中嶋幸治展「風とは」-9月23日(火)-10月5日(日)
am11時ーpm7時:月曜定休。
*秋元さなえ展ー10月28日ー11月9日
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503