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テンポラリー通信

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2014年 08月 05日

百年の眼差しーポプラー・葉月(4)

Aさんが図書館で見つけてくれた「生きていた百年の夢 
流水の科学者岡崎文吉」STV創立40周年記念ドキュ
メンタリー番組資料に岡崎文吉の論文が収録されていた。
「石狩川下流に於ける河岸原生林に就いて」と題
する論文である。
その中で次のような記述がある。

 其の当時札幌西方に聳ゆる藻岩山山頂より展望するに
 、沿岸樹木に遮られ、その流路を認識することを得ざ
 りしと云う。以って、如何に良く自然の状態を保持したり
 しかを窺ふに足るべし。
   (中略)
 現今、藻岩山頂より展望を試むるものは、明に本川
 流露を識別し、水天相映するを視るを得へし。
  (中略)
 ・・・一面には治水工事に必要なる柳粗朶を獲得する
 ために、河岸地に柳樹を裁植するの必要を感じ、先以
 て花畔・ピトイ付近堤防敷地内に於ける河岸決壊の
 激甚なる箇所を撰みて、柳樹を裁稙し、また天然柳生
 地内の老木を伐採し補稙をなし、新たに栽培せる総面積
 十三萬五千余坪に達し、普通耕作区域の境界線には
 「ポプラー」を挿植し、順当に其の生育を遂げつつある
 を以って、他日大いに面目を一新するに至るへきを信ず。

百年前岡崎文吉が藻岩山に登り、遥か石狩河口を望んでいた事
を示唆する一文である。
最古の登山道は界川沿いのコースなので、谷口顕一郎さんが
今回の滞在中に最後に採取した凹みの場所と重なるのだ。
さらに当時輸入されたばかりのポプラの樹に岡崎は触れている
が、このポプラの樹もまた旧藤田農場跡で岡崎の護岸工事跡の
探索時に見ているのである。
遠い岡崎の眼差しがこの一文を読んでいて、深く今に繋がって
届いてくるよな気がしたのだ。
明治時代の漢文調の文体からまるで現代に蘇る声のように、
 <ポプラー>とカタカナの文字が響いてくる。
私達が見た河岸の2本の背の高い2本のあのポプラは、きっと
岡崎文吉の挿植したポプラーの子孫でもあるのだろう。
死の前年の昭和19年自らの墓を自宅の庭に建立した岡崎文吉
が記した碑面には「石狩河遼河改修及松堂文庫開基記念碑 岡崎
文吉墓」と刻まれているという。

生涯川とともに生きた孤高の流水の科学者岡崎文吉が最後に挿植
したのは自らの墓碑だったのだ。

 岡崎さん! ポプラー!!

*斉藤周展「日々の形状」-8月10日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*及川恒平×山田航ライブ「声」-8月16日(土)午後5時~
 2500円。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き 
 tel/fax011-737-5503

 

by kakiten | 2014-08-05 15:28 | Comments(0)


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