岡崎文吉の遺したコンクリートマットレスの護岸跡と
伏見稲荷の見捨てられた石段は、透明な水と空気の凝縮
する濃い空間に架けられた異界への回路のようにあると
感じている。
透明な空気は山という異界で凝縮し生まれている。
水という透明な有機体もその山に発し、川を通って河口
へ海へと凝縮して集まる。
このふたつの透明な有機体が凝縮し濃く存在する異界の
入り口に沿って回路のようにコンクリートマットレスの
護岸と祠への石段がある。
透明な見えない存在の向こうに人間の力の及ばない大い
なる異界の存在を古来人は感じていたのだ。
岡崎文吉の自然工法による川の護岸工事もまたその伝統に
則った水への参道のような境界への架橋行為であった気が
するのである。
空気の生まれる処。
水の凝縮する処。
そのふたつの異界を結んで、人間の住む都市がある。
異界への畏怖と敬意は人に文化という参道を与えてきたのだ。
その時代時代で固有の参道形式を生み出し、空気が恐ろしい
風となり、水が荒れ狂う洪水となる事を恐れ、宥める術を試
みてきたのである。
その異界への畏怖・敬意が喪われつつあるのが、現代である。
空気や水のような見えないものへの回路を如何に同時代として
再生できるか。
それが今きっと問われている。
*谷口顕一郎展^7月19日(土)-27日(日)am11時ーpm7時
月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503