体調悪く伏せていたが、7月末まで滞在予定の谷口顕一郎
・彩子夫妻を案内して伏見稲荷の忘れられた石段に行く。
本来の山裾から幅10m程のU字形に湾曲した堂々たる
石段が中腹の朱の鳥居へと繋げている。
その鳥居と石段の間をかって冬季札幌オリンピック開催時
に大倉山ジャンプ場と真駒内アイススケート会場を結ぶ環
状線が造られ、石段と鳥居は分断され、この石段は今や忘れ
られたように濃い森の翳に沈んでいるのである。
谷口さんが石狩河口に残る岡崎文吉の自然工法の治水跡に
作品素材を見出し、界川ー琴似川水系の暗渠路面に今回受賞
の作品があった事から、今回の源流域に近い山の斜面に遺され
た石段の凹みに作品が繋がればひとつの流れが生まれると感じ
ていたのだ。
案内して現場に着きすぐ気に入った亀裂を発見してふたりの声
があがる。
新緑の濃い緑の被さる石段の左には深い森が幽かな水音を
立てている。
茂った山の斜面から微かな湧き水が流れ出している。
山の斜面に沿って護岸するかのように、石段を組み鳥居を
建て祠を造った。
これも山という自然の地形に逆らわず自然の脅威を宥める
自然工法ともいえる先人の知恵であるだろう。
明治の先達岡崎文吉の川の蛇行を基本とする自然工法の護岸
遺跡と見捨てられた源流域の石段とを結んで、琴似川水系が
ひとつの流れとして再生出来れば良いとこの時確信したのだ。
札幌生まれの顕と彩さんの新たな札幌マップがきっと生まれ
る事だろう。
先ずは今月の個展が楽しみである。
*谷口顕一郎展ー7月19日(土)ー27日(日)am11時ー
pm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503