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テンポラリー通信

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2014年 06月 13日

危険と安全ー星霜・水無月(9)

Y氏より熊の木彫りを纏めた本のお披露目の案内が来る。
明治時代スイスから輸入された熊の木彫りは、武士の内職
として冬の時期に広まり、北海道の土産物として定着して
いく。
初期のパターン化しない手彫りの熊は驚くほど独創的であり
貴重な文化遺産である。
それらを時代や場所と仕分けしつつ系統的に収集し纏めた
のが今回のY氏の仕事である。
彼のアトリエは大小の熊の木彫りで埋もれている。
そんな時宮の森の住宅街、中学校の周囲に熊出没のニュース
が流れる。
熊木彫りの本場スイスではもうとっくに森が消え熊も生息
していないらしいが、ここ札幌ではまだ熊も健在なのだ。
毎年熊出没の報道はあって、そのたびに警戒が高まり安全
が叫ばれる。
自然に近い事とは危険と同義で、対する都市とは安全の事
でもあるだろう。
札幌国際芸術祭のメインテーマは「都市と自然」という事
のようだが、それは安全と危険という主題とも捉えられる
ものだ。
自然という野生は一方で危険に満ちた都市と対峙する存在
で、油断すれば人間を滅ぼすものですらある。
その自然・野生と境を置いて木彫りの熊にしたり、防風林
を植えたり、里山を造ったりと人はその調和に心を砕いて
きたのだ。
私達が安全と感じるような自然とは、そうした都市化した
自然の一部でしかない。
この界(さかい)の意識を喪失して自然に接してはいけな
いものと思う。
境界(さかい)にあたる入り口のような処には、祠や石仏
といった象徴的な何かが祀られていたのである。
その装置を忘れて都市と自然という主題は本来成立しない
のだ。
剥き出しの自然は危険に変わってくる筈である。

*佐佐木方斎展ー6月15日(日)まで。am11時ーpm7時
 
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 yrl/fax011-737-5503

by kakiten | 2014-06-13 13:47 | Comments(0)


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