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テンポラリー通信

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2014年 06月 05日

無頼の人ー星霜・水無月(3)

役人さんやら記者さんやらミュージシアンやら色んな職種
の人が集まって作品を肴に話が弾む。
暑さに比例して冷えたビールの差し入れが多く、酒好きの
方斎さんには堪らなく良い時間である。
朝開廊と同時に来て閉廊時まで飲み続け、その後居酒屋へ
行く、これがほぼ日課である。
話といえばユーカラの口承のようにいつも同じ武勇伝を
繰り返し語っていて、Y君などはもうすっかり暗記して
しまうくらい繰り返し聞かされている。
昨日も山菜からオオイタドリを乾燥したタバコの話をして、
それは合法ですか?と突っ込まれて絶句していた。
今は美術家もアーテイストなどと上品な社会的地位にあって
あまり無頼の人は見当たらないが、ある時代まで間違いも無く
どこか胡散臭く酒好きで助兵衛で常識的でない人たちが芸術
家と呼ばれる人たちの固有の匂いだった。
しかし私生活は乱脈でも、作品はどこか凛とした品位があって
一途だった。
前回まで追悼で展示していた八木保次さんもまたそうした作家
のひとりだった。
方斎さんが八木さんにある種共感して語る<熱い抽象>という
言葉にもその事を感じるのだ。
今回の新作百号2点も画面表面に陶芸の貫入のように刻まれた
ひび割れはその熱い抽象の末の果てのようにも思われる。
そして赤と青の二色で構成されたそれぞれの色彩が、赤黒い血
と青い血のように煮詰まった熱い抽象の果てを感じさせるので
ある。
しかししてそれは決して下品なものではなく、最終章の感傷に
陥って在る訳でもない。
昨年制作された「自由群」の新作が復活の瑞々しい鮮やかな色彩
に満ち溢れていた事、それを今回版として再構成され製本された
「部分群」とを併せて見る時、この百号2点の保つある凛とした
境地を素直に受け止める事が出来る。
可能な限り時代と真摯に向き合い、飾らずあるがまま全力で生き
抜いた無頼の人の辿り着いた熱い静寂。
それが今回の2点の赤と青の貫入を支配している境地でもある
だろう。

*佐佐木方斎展ー6月3日(火)-15日(日)am11時ー
 pm7時:月曜定休。
*谷口顕一郎展ー7月15日ー27日
*斉藤周展ー8月1日ー10日
*小谷俊太郎写真展ー8月26日ー9月7日
*秋元さなえ展ー10月28日ー11月9日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2014-06-05 12:59 | Comments(0)


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