佐佐木方斎さんが来る。
昨年の秋の個展以来である。
百号の大作が2点完成したと言う。
さらに昨年秋の新作を版画にした画集も今
製本中という。
それで個展の会期の相談に来たのだ。
昨年「自由群」の新作80号他を描き上げ個展後次は
新作百号に挑戦するとは言っていたが、本当に作品を
制作したようなのだ。
ずっと傍らで不肖の息子を見てきた母上が、作品を見て
珍しく良いねと褒めてくれたと、少し照れたように話す。
欲得の無い無心な母親の評である。
俄然どんな作品か見たくなった。
ブルーが基調で赤が一点という。
長い潜伏期間を経て昨年復活した佐佐木方斎の一色突破
の色が赤なのだとこの時思った。
八木保次さんの死去以降<熱い抽象>の作家がいない、
だから自分はそれを志して作品を創ったのだと言う。
冷たい抽象に熱い抽象という感覚的な言い方に、「格子群」
「余剰群」「自由群」の3部作をかって制作し純粋形象の
色彩を追及してきた方斎の原点のようなものを私は感じて
聞いていたのだ。
「格子群」の保つ直線単色構造はきっと<冷たい抽象>に
入り「余剰群」「自由群」の多色の構造は<熱い抽象>へ
と繋がる作品なのであろう。
そして昨年の「自由群」の復活以降それは<熱い抽象>とし
て作家の原点の更なる深化として今回の百号の油彩作品に
結晶しているのかも知れない。
ひとりの優れた作家の再生と復活に立ち会える事をとても
幸せに感じている。
2006年にベッドに臥したままの彼を見舞い、そこから再生
の昨年秋まで今この場の時間と共にあるひとりだからである。
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