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テンポラリー通信

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2014年 03月 23日

幻の地下歩道ー拠点・弥生(13)

山田航さんがここ1年近く道新朝刊に月2回ほど連載を
続けている「札幌モノローグ紀行」。
札幌の知られざる土地の記憶を探り、そこで短歌を一首
創作するというユニークな連載企画である。
すでに26ヵ所ほど知られざる札幌近郷の地域を発掘し
記載している。
今回一番最近取り上げた場所は、1987年に建設され
30年近くも封印されていた都心地下に残された幻の地下
歩道である。
バブルの崩壊で計画が挫折し封印された130メートルの
地下歩道が、最近再び再開発の話となり2018年に開通
するという。
その幻の地下通路を歩いて創った一首。

 坂道がもし階段の母型ならその上の空に散る灰の花

整備前の地下歩道に立ち入って、階段になる予定の斜面を下
った時の印象が上記の歌となった。
札幌が大きく変わった象徴が都心のビル街と地下街の建設
である。
札幌冬季オリンピック開催を境に市街地再開発法が施行され
街は大きく変貌したのだ。
<坂道がもし階段の母型なら>という一節にこの再開発の
原点を見る気が私にはする。
地下街やビル街の建設と同時に消え変貌したものが<坂道→
階段>と感じるからだ。
坂ではなく動く階段、上下する垂直な昇降機が取って代わる
からである。
地下歩道に残されていた階段になる以前のコンクリートの斜面
に階段の母型を感じ、同時にその上空に<灰の花>の<散る>
と歌った感性は鋭いものがある。
札幌は川の扇状地に広がるなだらかな地形であるから、大きな
坂のある街ではない。
しかしそれでも静かで緩やかな道の高低は伏流水の湧く泉に沿っ
て起伏としてあるのだ。
市街地再開発で建ったビル群や地下街・地下通路はその自然の
起伏を視界から消し、直線でフラットな通路が天地に隈なく張り
巡らされる構造となるのである。
コンクリートの高層ビルと地下通路は正しく<灰色の花>となって
天地に展開する。
人工の坂道は階段となり、階段はエスカレーターとなり、エレヴェ
ーターなって道は直線の速度に支配される。
そうした都市の本質構造をアートやきらびやかな商品といった眼の
匂い消し抜きにした都市構造の原型として幻の地下歩道が今に伝え
ている事を、山田航の一首は示唆している。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2014-03-23 15:11 | Comments(0)


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