同時に2通の出立の便りが届いた。
一通はロンドン個展の吉増剛造さんからで、もう一通は
同じロンドンへ旅立った鈴木余位さんからの手紙である。
吉増剛造展は、これまでの集大成のように銅版の仕事
GOZOCINE、詩朗読、そして昨年暮にここで展示さ
れた「怪物君」の映像作品等が3月31日から5月13日
までロンドンで展示されるのだ。
そして鈴木余位さんは1年間の国際留学の最初の一歩を
この吉増展のあるロンドンからスタートするのだった。
映像作家石田尚志さんと共同制作した吉増さんの草稿440葉
を撮影した「怪物君」のDVDと一緒に出発直前のメッセージ
が添えられていた。
この映像怪物を抱きながら世界の際を巡ってまいります。
いってまいります。
余位拝
吉増さんの手紙には、今回のキューレーター岡本さんの獅子奮迅
の活躍に感謝し、向こうで余位さん、村上文氏とも会える事が記
されていた。
そういえば、ここでの吉増展オープニングにも来ていた川戸氏も
合流すると情報が入っている。
昨年末のここでのオープニングがそのままロンドンへ移行したか
のようなメンバーである。
札幌の見えない水脈を辿り石狩河口に座して作品が生まれ、そして
20年の伏流水のような時を経て再びその創造の泉が湧き出すよう
に今の時間がある。
その一つの大きな流れがロンドンまで人も作品も流れてゆくのだ。
石狩・札幌という場がひとつの土壌となって<世界の際を巡る>。
真の国際化とはこうしたインターロカルなものではないのか。
ヨーイ、ゴーと号砲のような剛造、余位のふたりの出発の手紙を
同時に受け取ってそんな思いも抱かされたのであった。
一方で札幌国際芸術祭に「ハコレンー札幌ギヤラリーネットワーク」
が提唱され、芸術祭サポーターのように箱ネットを企画しているとい
う情報もある。
ハコレンとは正に今回の芸術祭の本質の一面を顕している。
場は断じて箱ではない。
産土の土壌でなければならぬ。
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