冷涼な空気に光が溢れている。
久しぶりの青空、秋晴れが広がる。
秋は喨喨と空に鳴り
空は水色、鳥が飛び
魂いななき
清浄の水こころに流れ
・・・・
高村光太郎が「秋の祈」で冒頭に記した詩行である。
そして最終行は
いのる言葉を知らず
ただわれは空を仰いでいのる
空は水色
秋は喨喨と空に鳴る
この詩をふっと思い出させるような今日の空だ。
かって札幌は、エルムの都と呼ばれていました。札幌は豊平川水系の
扇状地に明治以降出来上がった街で、泉端からは泉が湧き出て小川を
形成し、多くのエルム(春楡)が自生しておりました。かって街中に
残っていた大木が時にチャチャニレ(年老いたニレ)とも愛称され、
北一条通りの名物であったこともありました。エルムは高水位の地形
を好んで自生し、春楡がアイヌ語では、チ・キサ・ニ(我ら・こする・木)
といわれ、本州の檜(火の木)に対応する生活文化を支えた大切な樹
であったといいます。
現在、そのエルムの森は次第に姿を消し、わずかに公共的な敷地にしか
その姿を見ることが出来なくなりました。その森の面影を今に残す一帯
が、植物園の森であります。ここは原生林の姿をそのまま囲いめぐらし
て植物園とした、先人の英知が活かされた場所であります。
さらにここは、北方の北5条通りを挟み伊藤邸のある広大な往時の面影
を残す庭へと続き、JRの高架線を越え、札幌市指定文化財の清華亭庭
のエルムの大木へと繋がります。清華亭はさらに北海道大学の広大な構
内の森へと続き、この緑の運河ともいうべき森と泉のゾーンは、札幌の
原風景としてかけがえのない<風景の文化遺産>のゾーンを形成してお
ります。
(「緑の運河エルムゾーンを守る会」趣意書から)
何故かこの文面が高村光太郎の「秋の祈」と、ふっと呼応して思い出され
たのである。
秋の水色には、森・泉・空がよく似合う。
エルムの梢にも、秋は喨喨と空に鳴る。
*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー10月6日(日)まで。
am11時ーpm7時;月曜定休。
*佐佐木方斎展ー1期「コレクシヨン展」10月8日(火)-13日(日)
2期「新作自由群」展10月15日(火)-27日(日)
テンポラリースペ-ス札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503