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テンポラリー通信

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2013年 09月 26日

駅とは?ー逍遥・長月(20)

朝、宇田川洋氏と市役所庁舎で待ち合わせ陳情書を提出する。
「緑の運河エルムゾーンを守る会」代表の宇田川氏は、珍しく
背広姿である。
17階にある受付場所で、淡々と若い職員の応対がある。
多くの陳情者が色んな案件を携えて訪れる所なのだろう。
極めて事務的な応対である。
後日あらためて連絡がある事でこの日は終了した。

昨夜のニュースでさらにまたJR北海道の手抜きが報道された。
かっての民営化のひずみが、ここのところ一挙に噴出している。
採算重視に偏り、本来の鉄道の公共性が一企業の利益追求の流れ
に堕して、道都中心のJR産業へと変質している所為である。
その象徴がJRタワーに代表されるテナント商法だ。
これは駅本来の保つ停車場機能よりもショップを主体にした賃貸
業化で、そこに本来の公共的な輸送事業よりも道都特権化を消費
を中心に据えた利益追求構造が透けて見えるのである。
JR北海道という一企業の圧倒的な寡占事業に呼応するように行政
も駅前通りを大規模な地下道化を推進し、さらにはその目くらまし
のように多くのパブリックアートが設置される。
送付されてきたJRタワーの資料によれば、今年2月現在で52点
のオリジナルアート作品が配置されているという。
さらに東地下コンコースに壁面のアートボックスを設けて公募作品
を展示している。
この地下通路に隣接する札幌エスタビルの11階には、美術展示場
としてプラニスホールがあり、「アートプラネッツ展」「織姫たちの
スイーツ・アート展」などが「駅直結の文化発信拠点」と謳って華々
しく開かれた。
正に天も地もアートで花盛りのJRタワー界隈なのだ。
このJR北海道の札幌一極集中化は、衣食にアートを加えて豪華に
亜流東京的にショップ化し、駅は集客の場と化して本来の輸送乗り
継ぎの停車場機能は埋もれてきているのである。
これらの動向に政治も行政も財界も文化も呼応するかのように、この
大規模地下通路に連動して500m美術館が設けられ様々な形でアー
ト関連の催しが続けられている。
明年の国際芸術祭関連事業もまたその中に入っている。
地下通路そのものをすべて否定する気は毛頭ないが、ここに文化が
育つかといえば、それはやはり否定的足らざるを得ない。
インフラとして否定はしないが、文化を生む土壌とは思わない。
何故ならそこには屋根が無い、空が無い、森が無い、歴史も無い。
タワー系高層ビルもまた同様である。
かって駅は駅であり、商店街はその駅に続く駅前通にあった。
その代表が札幌では駅前にかってあった百貨店五番館である。
この赤レンガの建物で親しまれたデパートは、戦後の黒澤明の映画
「白痴」の冒頭シーンにも登場した。
後年「影武者」の撮影で再び札幌を訪れた黒澤は呟いたという。
「もうこれは札幌ではない。」
この建物は後に五番館西武となり、今はただの空き地、駐車場と化し
て何も残っていない。
この事実は、駅前通の地下化と駅のJRタワー化と無縁ではない。
本来の駅が消え、その結果として地上の駅前通りが消えた象徴なのだ。

どんな小さな駅にも、その駅本来固有の匂いや風景がある。
東京の山の手線でさえ、各駅に固有の風景がある。
そうした多様性を喪失して、上っ面の亜東京化ばかりを追いかけエセ中央
化し、衣・食の欲望とアートばかりが踊っている。
駅が駅本来のものを失えば、輸送事故多発もまた必然となる。
それは何もJR北海道だけの事ではない。
芸術・文化の現実もまた然りであるのだ。

アートって何さ?
地下街アート?ビル壁アート?ネイルアートだね・・?

*「一原有徳と佐佐木方斎ー小樽・札幌」展ー10月6日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*佐佐木方斎展ー1期コレクシヨン展・2期新作「自由群」展
 1期10月8日(火)-13日(日)・2期10月15日(火)-
 27日(日)。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-09-26 15:50 | Comments(0)


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