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テンポラリー通信

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2013年 09月 20日

熊の巣窟ー逍遥・長月(16)

パソコンのご機嫌が悪くて、”ようこそ!の表示の後なにも
映らない。
従って何もアクセス出来ず、あちこちキーを叩いて、ひょい
と表示が回復したりして苛苛する。
パソコンを提供してくれた梶田清尚氏に連絡する。
2日間連続して診てくれる。
設定を色々変えて2日目何とか落ち着く。
この間一日目は直らず、夜山里氏のアトリエにみんなで熊の
木彫りのコレクシヨンを見に行った。
アトリエは以前訪ねた時とは打って変わって物凄い量の木彫
りの熊が整理されて埋まっている。
ひとつずつタグ付けされて通し番号が貼られている。
一緒に行った熊好きの若林和美さんが思わず大きな声を上げる。
机の引き出しにも小さい熊が沢山収納されていて、しばらくは
みんなそのコレクシヨンに目を奪われ声も無い。
その後それぞれの気にいった熊を手にとって独白のように語り
続けていたのだ。
今集まったメンバーの名前を思い出すと、何故か村・熊・河・山
・林・森と熊を囲む自然のような苗字である。
そんな苗字の人間が、<山里>アトリエに集合した。
みんな熊さんの遠い縁者だったのかも知れない。

日本人の苗字には自然を表わす一字入っている率が多い。
そして熊という文字も意外と周囲にはいるようである。
それだけ熊は日本人の周りに普通にいた動物だったのだろう。
その熊を木彫りにして、明治のある時期以降大量に彫られて
道産土産として一時期流通する訳だが、今は機械化しパターン
化して次第に飽きられ廃れようとしている。
それを初期のものから系統的に整理し蒐集して、場所・作者・時
代を調べ一冊の資料集として纏めつつある山里稔氏の努力は正に
平成の柳宗悦のような無名の民芸に光を当てる優れた仕事である。
こうした地元の隠れた文化をカルチヴェートする地道な作業こそ
インターローカルな真に国際性を保つ仕事である。
自らの作品創作活動を一時棚上げして、この2年半熊の木彫りの
収集と調査に徹底した集中力は、尊敬に値する事と思う。
この北の地でなければ為し得なかった熊の彫刻に籠められ先人の
匠(たくみ)の技は、大地の息吹、自然の荒々しさ、そして優美
さを時にどんな芸術作品よりも雄弁に語りかけてくれるのだ。
浮ついた国際性を謳う前に足元にある文化の位相をきちっと見据
えてこそ、何事かが始まる。

石狩河口の大野一雄の鮭・「石狩の鼻曲がり」、そこから芽生えた
カムチャッカへの熊の舞踏への熱い想い。
そして岡崎文吉の治水思想の再発見。
それらに繋がる緑の運河エルムゾーンの再生と、根幹において深く
通底する本質的な事象がある方向性を指差して語りかけてくるよう
な気がする。
山里さん、立派な良い仕事です。
ありがとう。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-09-20 13:16 | Comments(0)


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