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テンポラリー通信

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2013年 09月 18日

秋の風吹くー逍遥・長月(15)

半袖だと寒い気がする。
あの夏は何処へ行ったのか。
風が少し強く、向かい風に自転車の速度が落ちる。
見えない川の上、風が流れる。
やがてこの風に乗って蜻蛉が舞う日が来る。

札幌国際芸術祭2014プレイヴェント第二弾「札幌の未来へ
向けたヴィジヨンを聴こう」と題したチラシが送られて来る。
坂本龍一グストデイレクターを迎えての3部構成である。
坂本龍一に合わせて、音楽コンサートが主体に日程が組まれて
いるが、本命は初日の第二部シンポジュムにあるだろう。
しかしその前後に札響の演奏会がふたつ入っているから、これ
は坂本龍一へのオモテナシとも受け取れる。
翌日は坂本龍一のソロコンサートとなっていて、会場はともに
札幌コンサートホール・キタラなのだ。
音響設備が自慢のこの大ホールで、著名な音楽家を迎えて国際
芸術祭のプレが行われる訳だが、なにやら肝心の札幌よりも客人
の方に目が向いているような、オモテナシ感を感じてしまうのだ。
国際芸術祭とは、海外を含めて外からのアスリートならぬ多くの
芸術家を招き展示を競い合う祭りなのだろうが、五輪とは違うも
のがあるとすれば、それは勝ち負けではなくテーマの深度という
場が保つ理念と哲学だろうと思う。
札幌という都市が保つ固有の磁場を真に提示出来得るか。
極めてローカルでありながら、それが国際性を保つインターロー
カルであり得るか。
余程本質的な深部の普遍性・俯瞰力を保つ主題の深化がなけれ
ば、結果は勝負の伴わないアートオリンピックのようなオモテナ
シ祭りになるだけと思われる。
「都市と自然」という基本コンセプトは、正に3・11以降の大
きな人類的な普遍的命題でもある。
この自然と都市というふたつの相反する相克と闘いながら人類の
歴史は刻まれ、その一番近い時間をこの北海道は背負って生きて
いるのである。
自然というものが如何に人の生活を破壊するか。
都市化というものが如何に自然を破壊するか。
このふたつの間には、多くの先人の知恵が苦労が詰まっている。
そこをきりっと見通してこの主題を深化させないなら、真に札幌的
と呼びうるテーマとはならず、町おこし的なアート見本市に終わる
だろう。
楽天的都市観や楽天的自然観からは何も本質的な問題は見えて
こないという、深い洞察の視座こそが今必要なのだ。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-09-18 14:24 | Comments(0)


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