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テンポラリー通信

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2013年 09月 03日

パラトで・・・-逍遥・長月(2)

先日岡崎文吉のヴィデオを見たAさんから早速岡崎式自然工法
の護岸跡を調べに石狩へ行ったと連絡がある。
パラトの川岸でこれではないかと、写真が添付されてきた。
そうか、ショートカットされる前の石狩川はここなのかもしれない。
もっと海寄りの河口に近い場所を思い浮かべていたが、篠路村
の拓かれた海からの上陸地点に近いのは、川の合流するパラト
(広い河口)と呼ばれたこの地である。
札幌川、発寒川、琴似川が支流を集めて合流する場所。
内陸の札幌へ繋がる元村街道(茨戸街道)が通じている処。
この陸路と水路の扇の要のような場所がこの地である。
そこに堤防が造られるのはきっと必然的な必要性があったの
かも知れない。

宮崎駿が引退の意向という。
今公開中の「風立ちぬ」は、まだ未見だが岡崎文吉と同じ時代に
飛行機の夢を追い求めた人物が主人公という。
空を飛ぶ飛行機と、水の流れを大切にした自然工法の堤防とは、
ジャンルこそ違え水と空気の流れを徹底的に研究し活かそうとした
自然への回路視点で共通するところがある。
そしてなによりも当時の社会的要請とその理想とするものが一致せず
事志とは違う方向でその研究成果が使われ、時に真に認められなかっ
た事実がある。
研究者の高い理想と実践は時に現実の国家社会の要請によって、より
実利的で非自然な方向へと捻じ曲げられてゆく。
風と水の違いこそあれ、ふたりの目指した工作物はともに自然との共存
によって生まれた作品でもある。
互いに自然との深い対話から生まれた理想の姿を追求し、それが空気
と水の違いこそあれともに流れるもの・風と川の流体力学を徹底的に
見詰めたという点で非常に近いものが本質的にあるように思える。
そして国家が要請する実利的な成果との狭間で深く苦悩している。

その苦悩は、今も少しも古びてはいない同時代の苦悩である。
宮崎駿が最後にこの事を主題として選んだという事は、その意味で
極めて象徴的な今を感じさせる事実だ。
そして偶然なのか必然なのか、この時期古いヴィデオが蘇って岡崎
文吉の水の流れの自然工法が再び雄弁に語り出すとは・・・
不思議だなあ。
風立ちぬ・・・
川立ちぬ・・・。


*収蔵品展「記憶と現在」-9月15日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-09-03 13:21 | Comments(0)


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