網走の漁師で画家の佐々木恒雄さんからチルドの鮭が送られて来る。
久しぶりの便りだ。
オホーツクの海で頑張っているのだろう。
今日は朝から写真家Y氏と織りの作家Aさんが来て、話し込む。
その後熊の木彫りを蒐集し系統立てて歴史的に整理し資料化している
篤実な山里稔氏が見えて、オホーツク文化とアイヌ文化の権威宇田川
洋氏と市の文化財課のK氏に連絡を取り、会う約束をする段取りをした。
道南八雲の徳川家の殿様がスイスから持ち帰った木彫りの熊は、この地に
根付いて独特の造形として伝わっている。
今では土産物の定番から外れつつあり、かつ作品も機械彫りのパターン化
したものが多いが、ある時代まで独創的で斬新な造形作品が遺されている。
それをこつこつと蒐集し系統立てて一冊の資料として纏めようと山里氏は
この2年半ほど奮闘しているのだ。
本家のスイスではもう熊もいなくなったが、ここ北海道では今も熊がいて
熊の木彫りも続いている。
和人もアイヌも共通してこの熊の木彫りを続けた百年に満たない時間に残
る彫刻群は今やいつ消えてしまうか分からない時にある。
今貴重な作品を記録し保存する事は、北海道独自の民芸としても大切な文化
の仕事なのだ。
熊の話をしていたら、オホーツクの海から鮭が届く。
そしてその前に写真家Y氏と織りの作家Aさんとが見ていたのは、大野一雄
の石狩河口舞踏公演「石狩の鼻曲がり」だったのだ。
不思議な連続である。
大野先生はこの公演の数年後、羆の踊りをカムチャッカで父の為に踊りたい
と熱く語っておられた。
その願いは病に倒れ実現できなかったけれど、この国境を越えたオホーツク
の島で踊りたいと喪った父への思いを初めて人に語ったのは、熊の舞踏だっ
たのだ。
そのオホーツクの海から鮭が届いた。
切り傷は直線をなすアフリカの幾つもの国境にも似て
佐々木恒雄さんが「さよなら バグ・チルドレン」展で山田航歌集から選んだ
一首である。
*収蔵品展ー9月15日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503