東京日本文学館のY氏より吉増剛造さんの講演記録と資料が
送られて来る。
講演はカセットテープに録音されている。
ひゃあ~、久しぶりにまたテープレコーダーを取り出す。
先日ご本人から送付されたのと同じ草稿のカラーコピーも
添付されていて、砂粒のような細かな文字を音読している
のには吃驚する。
時に書いた本人にしか読めない文字だが、目を凝らして文字
を拾うと音声とともに吉本隆明の日時計詩篇が、詳細に分析
され、熱く語っているのが良く分かる。
途中人が来て気持ちが中断し、かつテープレコーダーの電池
が切れそうで音声が途切れる。
もう一度あらためてゆっくり聞こうと思う。
昭和25年頃毎日吉本隆明が書き続けた直筆の草稿を、文字
一文字にも神経を注ぎ解析する吉増さんの、この集中はどこ
からくるのか。
いま進行中の自らの日々の草稿とこの時期の吉本隆明の日々の
草稿の行為とがどこかで共鳴するものがあるからだろうか。
草稿の肉筆の文字の僅かな震え、行間の揺らぎ、傍点ひとつに
も目を配り裸の文字を凝視している。
活字化される以前の文字に顕れた作者の呼気吸気まで掬い取る
かのように、声に出し文字に表して肉迫している。
瀧口修造の小樽時代や吉本隆明の日時計詩篇時代と、ともに
まだ無名に近い時の柔らかな精神の裾野に深く触れようとして
いる。
これは吉増さん自身の原点の再構築なのかもしれない。
文月悠光さんが来る。
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