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テンポラリー通信

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2013年 08月 10日

故<郷>に帰るー梢心・葉月(6)

久しぶりに帰省すると便りがある。
京都の会社に勤務するK君、否K氏と言うべきか。
今ベルリンにいる谷口顕一郎さんと同期のK氏を見送ったの
はもう10年近く前になる。
ふたりとも相次いで札幌を立って行った。
今大学在学中のFさんも帰省でその内顔をだすだろうが、K
氏のようにもう社会人となって久しぶりの帰郷に、ここ札幌
はどう映るのだろうか。
故郷とか故里というけれど、人は本当に郷や里と故(ふるい・
ゆえに)と繋がって存在しているのだろうか。
帰るよと連絡をくれ、会いに来てくれる人の関係性としては
<故>は繋がるけれど、それは<郷>でも<里>でもない。
故里は遠く離れて想うものというけれど、本当にどう見える
のか、K氏に聞いてみたい気がしている。
そして時間が許されれば、緑の運河エルムゾーンを案内して
あげたいと思う。
これが君の生まれた場所の自然の記憶、エルムの都の面影だよ
と、伝えたい。
今京都に住むK氏に、京都に似せた札幌の街並みと京都とは違う
自然環境の相違を実感して欲しいのだ。
それが、故<友>として出来得る故<郷>の提示だ。

大倉山のジャンプ台から撮影された札幌の街の写真がある。
某TV局の「バッケンレコードを超えて」というドキュメンタリー番組の
パンフレットに載っている一枚だ。
石ころの羅列のような市街地に横一線の緑の帯が映っている。
これが「緑の運河エルムゾーン」である。

 ・・明治になって開拓された札幌は街が発展するにつれてどんどん
 緑がつぶされていった。もちろん郊外にいけば自然はあるが、中心
 部には決して多いとはいえない。

 (堀 淳一「地図が語る札幌の歴史」-日経新聞2013・4.8)

この古地図研究の第一人者は、むしろ東京や京都の方が中心部において
は緑が多いと断言している。

 東京や京都にはお寺や大名屋敷などが多くあった。その跡に緑が植え
 られ公園などになっているケースが多いのだ。

郊外の自然と都市の中の自然とを混同して、札幌は自然が豊かと勘違い
している、と堀さんは記している。
むしろ地図に現れた歴史からも事実はその正反対で、<街が発展するに
つれてどんどん緑がつぶされていった>のである。
そしてその勢いは今も変わらず進んでいる。
大倉山の頂上から捉えられた一枚の写真は、何よりも雄弁にこの事実を
カメラの眼で伝えてくれる。
ほんの一条の緑の線、石の川原のような索漠たる灰色の地にそれは伸びて
いる。
かって湧き水が流れた泉池と森の記憶の線である。
その伏流水と湧き水の大地に今も残るのが春楡・エルム等の巨木群であり、
その緑の線がこの一条の緑の翳となってあるのだ。

帰省するK氏に是非この一条の緑の光の翳の中を歩いてもらいたい。
そう今から思い定めている。
これが故郷の故里の、<故>である<ゆえ>だよ、と。

*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503 

by kakiten | 2013-08-10 13:59 | Comments(0)


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