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2013年 08月 03日

記憶の宙(そら)-梢心・葉月(2)

両親はじめ幾人もの死者を見てきたのだが、死者はいつも記憶の
暗い宙(そら)に恒星のように瞬く定点を保つようだ。
日常の猥雑な襞々は消えて、朝露のように結晶するものがある。
死というある絶対が額縁のように記憶の一点を凝縮させて、星の
記憶・光のように瞬くからだ。
昨年春の八木保次・伸子さんの死、そして今度の杉山留美子さん
の死と続いて、その一番親しかった遠い時間が今頃深く結晶して
いる。
近い晩年の時間の記憶は薄くて、遠い以前の濃い時間だけが
死後に輝きだすのは何故なのだろうか。
死で閉じた生の未完部分への悔恨であろうか。
生前日常に塗(まみ)れて見失っていた本当の心の回路、その
流路の発露でもあるような気がする。

爽やかな風吹く晴天が戻り、夏が過ぎる。
晩秋のナナカマドの赤い実の幻想が故人と重なり、真夏の昼の
底を駆けて行く。

同じ時代の記憶を有する友人正木基氏から現在東京東中野で上映中
の「映像の中の炭鉱」の資料が送られて来る。
正木さんの26000字を超える論考が8ページのチラシにぎっし
りと組まれている。

 ・・・かっての日本を支えた坑夫たちの死を語り継ぐこと、鎮魂
 の思いが、パーソナルな問題と重ねてなされていると気づかされ
 るだろう。
 ・・・・・
 廃山とともに登川鉱はもとの大自然に飲み込まれ、今は森林に埋も
 れていて、人々の炭鉱の記憶も希薄化している。
 そこで今野が掘り起こしたのは、登川炭鉱の記憶だけでなく、近代
 日本の炭鉱で、落盤事故などとの遭遇に怯えながら、それでも掘り
 つづけた坑夫たちのある思い、炭鉱とともに「生きる意欲」を喚起
 する坑夫社会の強い絆の記憶であった。

今野勉「地の底への精霊歌」-1993年・NHKTV作品
亀井文夫「女ひとり大地を行く」-1953年・映画作品
清水宏「泣き濡れた春の女よ」-1933年・映画作品

この戦前・戦後・現代を代表する3本の映像作品が上映され、その個々
の作品について詳細な正木氏の論考が添えられている。
ユネスコ世界記憶遺産に登録された山本作兵衛の展示に併せて開催され
同時に本橋成一と萩原義弘の「炭鉱から」写真展も開かれている。
2009年に「”文化”資源としての<炭鉱>」展を企画した正木氏
の変わらぬ真摯な仕事を感じて、嬉しかった。
この仕事の為に彼は杉山さんの追悼会に来られなかったのだ。
その事を何度か留守中に電話したと、後でメールで告げられた。
心折れて欠席した私など真にだらしない。

*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時;月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-08-03 13:59 | Comments(0)


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