ふっと心折れて、駅前ビルのホールでの杉山留美子さんの
お別れ会には出席しなかった。
背広に着替えに自宅へ帰るとどっと疲れが出る。
薄く雨も混じって重たい日。
TVを見て天気を確認する。
するとちょうどNHKの道内ニュース特集で岡部昌生氏の
福島での美術活動の様子が映されていた。
見えない放射能を記録する作品と津波により破壊された
物を擦り出すフロッタージュの作品だ。
杉山さんと同じ大学に勤めていて私や杉山さんと親しい岡部
氏が、杉山さんの追悼会の始まる時間に映像が流れている。
それを偶然見ている不思議・・。
出席しなかった自分への天国からの杉山さんの配慮だったの
かもしれない。
翌朝少し遅れて画廊に到着すると、Tさんが先に来ている。
手に大きな風呂敷包みを持っている。
中へ入れ奥へいくと風呂敷包みの中を出してくれる。
サンドイッチが沢山入っている。
昨夜の杉山さんの追悼会の残り物という。
わざわざドライアイス付で届けてくれたのだ。
一人で一度には食べられないほどプラステイックの器に盛ら
れたサンドイッチ。
心折れて出席しなかった自分に届けてくれたTさんに感謝と
同時に昨夕のTVに続いた不思議な冥界からのサインのよう
にも感じていた。
大きなナナカマドの樹に真っ赤な実が枝いっぱいに生って立っ
ていた。
実の重さの所為だろうか、風の所為だろうか、一枝の房が折れ
て幹の下に落ちていた。
その鮮やかな赤に惹かれて、真っ赤セーターの杉山さんが道を
渡って走っていく。そして落ちた赤い実の生る枝を拾いこちら
へと駆けてくる。
その時の赤の重なった輪郭のぶれた写真を探して机の上に置いた。
そして届けて頂いたサンドイッチを前に置き、手を合わせて食す。
小さな感謝の追悼です。
杉山さん、ありがとう。
*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503