吉増剛造さんより、直近の草稿のカラーコピーが送られて来る。
389、390、391の3葉である。
先日まで河田さんのところで展示していた340葉近い大草稿の
大束は東京日本近代文学館へすでに戻されたが、その展示時点
からすでに50葉の草稿が書き加えられている事になる。
この増殖し続ける草稿の隕石を、大箱に収めて展示する事への
抵抗がある、と本人は感じているようだ。
一葉、一葉が次第に、星雲から独立したひとつの星のように輝き
だしたのかもしれない。
そこで吉増さんの提案があり、私が3、40葉選び出しそれを壁
に展示するという案である。
そこで験しに今回のコピー送付という事となった。
送られてきた3葉を床に散らばしてみる。
細かな文字がびっしりと書かれた一葉、大胆な絵文字のような図
の一葉、ひらかな一字とも図案とも見える図と細かな文字の組合
わさった一葉の3葉が、黒い床に不思議なコントラストを見せて
いる。
草稿の大束が保つ隕石のような存在感とはまた違う、一葉、一葉
の彩が感じられる。
銀河から太陽系へ。
太陽系から個々の星の世界へ。
大石狩川から伏古川へ、伏古川から琴似川へ、琴似川から界川へ
と水源・光源の源へと一葉の世界へ遡上してゆくような気がした。
年末まで多分500葉に及ぶであろうこの大草稿の塊りを、今まで
のように塊りまるごと展示するのではなく、銀河系から小宇宙を
創るように、分離して構成し展示する事もおかしくはないなあと
思えてきたのだ。
大草稿の銀河系のような大束とそこから分離した太陽系のような世
界を、今度の展示では考えてみる価値があるようだ。
この増殖する隕石のような大草稿は、日々毎日書かれている吉増さ
んのいわば草稿のハミガキでもあり、その積み重ねはエンドレスの
永遠の営為と思われる。
従って全体の終結を考えず、過程の中での宇宙を構成する事でしか
今年末の展示は措定されないと思える。
問題はどう小宇宙を生むかだ。
川の分岐・合流のように水源である枝の小宇宙へ。
年末までの課題である。
*収蔵品展ー8月11日(日)まで。am11時ーpm7時;月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503