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テンポラリー通信

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2013年 07月 21日

街っ子ー道程・文月(16)

都心にあるCaballeroへ、SさんとTさんを少し
早めにここを閉じて、案内する。
初めて行く人は、場所が分からず迷うからだ。
Sさんの車で行ったのだが、一方通行が多く随分と遠回り
をする。
土曜日の参議院選挙最終日で、街は選挙カーやら人で混ん
でいる。
ようやく駐車場に車を入れ、大沢ビルへ向かう。
”ZO”展会場は4階で、先客がひとり。
河田雅文さんの宝箱のような収集品が、さらに少し増えて
いた。
瀧口修造の著作や村上さん提供の瀧口限定版資料等である。
SさんもTさんもゆっくりと会場を廻って見ている。
程なく扉が開いて美術館のF氏が顔を出した。
私の所へ寄ったそうだが、もう閉じていてここと中りをつけ
て来たという。
今展示中の「シャガール展」の案内状を手渡してくれる。
前回は帯広の作家ふたりと一緒に来て今回は二度目の”ZO”
展でF氏もすっかり寛いで空間に馴染んでいる。
シュールレアリズムのデュシャンを主とする個人的資料に、
吉増剛造のGOZOCINEや大草稿等が混在して、瀧口修造
へのオマージュとなっているこの河田さんの個人的宝箱のよう
な部屋は妙に落ち着くのだ。
個人の蒐集品を中心とする展示だから、ひとりの作家の作品展
示空間とは違う世界ではある。
瀧口修造やシュールレアリズムに興味がなければこの部屋の
閉じた世界は息苦しいものとなるだろう。

TさんとF氏が先に帰って、私はSさんと7階の喫茶室に行く。
テラスの席に出て、すぐ目の前にライトアップされたTV塔を
見上げる。
初めて来たSさんが小さく声を上げ驚いている。
こんな所があったんだ~!
テラスから下を見下ろしビルの裏町の仲通を見ている。
TV塔のある北の方角は大通り公園で視界が開かれているから、
ずっと先のJRタワーまで望めるのだ。
ビルの谷間の向こうに広がる空間がある事で、解放感がある。
さらに7階が最上階なので上を遮るものも無い。
中のレトロな喫茶店のソファとオーデイオのある喫茶室も好き
だが、今のような暑い時期には外のテラスの漂う裏町風情が私
は好きだ。
つくづく自分は、街っ子なんだなあと思う。
時の熟成しノスタルジックで、珈琲が飲め静かに話が出来る空間。
街が近すぎも速過ぎもせず、緩やかに街であること。
そんな場所にひどく落ち着いてしまう自分がいるのだ。

そんな街の一角は、ありそうで今はなかなか見当たらないのである。
しばらくこのビル近くに来たら、必ずこの喫茶室には寄りそうな
自分がいる。
夜電話が来てこの話をしたら、またあそこに行ったの、余程気に入
ったのね、と笑われた。

*「記憶と現在ー小樽・札幌」展ー7月21日まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。
 am12時ーpm8時:月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1条西1丁目2番地大沢ビル4F
 09076401305

by kakiten | 2013-07-21 14:32 | Comments(0)


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