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テンポラリー通信

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2013年 07月 19日

幟調子ー道程・文月(14)

小樽と札幌のちょうど境・張確(ハリウス)に住む加藤裕子
さんの個展を見にANNEX画廊に行く。
朝早めに出て山坂の道を途中自転車降りて上る。
オリンピックの為開発された山の中腹に延びる道路である。
伏見稲荷の連なる朱の鳥居とその下に続く参詣石段を分断し
西の大倉山ジャンプ場と南部のアイスアリーナ・スケート場
を連結した冬季五輪の輸送路である。
この下ではさらに円山墓地を分断して環状線が走っている。
墓地を切り裂き神社を切り裂く、誠に神も仏も恐れぬ物流
優先の道路なのだ。
本来の山裾の路は、伏見稲荷の石段の始まりに伸びている。
その路は裾野の清流沿いに伸びていて、ここから今も湧く
湧き水を私は珈琲に淹れている。
小さな川が毛細血管のように山裾にあって、そのひとつが
今回訪ねた画廊の奥に小さな谷として沈んでいる。
その沢の地形に沿って細長く奥に延びた空間が、今回訪ねた
画廊である。
奥へ通じる真っ直ぐな画廊の左側は曇りガラスの窓が続き、
外光が白く光っている。
そこにコンビニの宣伝用の幟布をほぐして、ハンカチのよう
に織り上げた美しい布が貼られている。
右の壁には手提げ袋のような赤や緑、橙色の豪華な感じの
織物が並んでいた。
この細長い空間を突き抜けると、そこに外へと開かれたテラ
スがある。
そしてそこには本物の4、5本の幟がはためいていた。
展示してあった美しい色彩の織物たちは、ウーロン茶の幟で
あり、サイダーの幟であり、おにぎりの幟であったのだ。
何百本も使用済みの幟を集めて、解き解してスカーフやら
袋物やさまざまな用品に再生しているのだ。
谷上の山の斜面、原始林の繁る青空に向かって幟が旗めいて
いる。
飲料水やおにぎりや街の生活に身近な商品の幟である。
それが、その大元(おおもと)の原始林と水の源流の枝沢の
奥に翻(ひるがえ)って新たな生命の形象を象っている。
その発想の逆転の素晴しさと作品の出来栄えの美しさにすっ
かり心が開放された。
コンビニとはconvenience:便利、便宜からきた言葉だ。
冒頭に記した神社を分断し、墓地を分断した五輪道路と同じ
ように<便利・便宜>の優先して生まれたチエーンショップ
である。
その宣伝用の旗・幟の布地を使って、手造りの美しい物品を
創る。
消費を煽り、時間が過ぎれば廃棄される商品広告の幟。
その消耗品としての布地をこんなにも見事に美しく再生する
事とこの場が保つ幟同質の利便性優先の道路造成によって
拓かれた画廊の位置がこれも見事にリンクして、この作品を
際立たせているのである。
さらにはこの幟の製造元が、地元を代表するコンビニのセコ
マである事も象徴的だ。
牛乳も水も地元産を謳う企業であるからだ。
この画廊の下に広がる小さな谷は、界川の源流の枝沢のひとつ
であり、山斜面のさらに上には不動の滝が祀られ春には美しい
シラネアオイが咲き乱れ、またかっては狐を飼育し養狐場とし
て毛皮の襟巻きを造っていたゾーンでもある。
そうした地形を無視し五輪会場の輸送路として強引に切り開か
れた冬季五輪以降は車社会の到来もあって、今や高級住宅地と
なっている。
しかしながらこの個展会場となった場所には、可能な限りその
素の地形に沿って空間が設計されている。
本来の沢・谷・斜面・原始林が残されている。
幟を解(ほぐ)し、その素の布地を使って織り直すという極め
てラデイカルなこの行為は、正にこの場が保っている破壊から
再生への烽火のような美しい幟(のぼり)ともなっていると思
える。
  
 「コンビニ幟に 愛は残っているか」ー加藤裕子展
 7月21日午後5時まで。
 札幌市中央区旭ヶ丘2丁目ギヤラリー門馬ANNEX

あなたの作品自体が、愛ですよ・・・。
幟(のぼり)調子の、旗めく加藤さん・・・。

*「記憶と現在ー小樽・札幌」展ー7月21日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。
 am12時ーpm8時・月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1条西1丁目2番地大沢ビル4F
 tel09076401305

by kakiten | 2013-07-19 14:49 | Comments(0)


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