人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2013年 07月 18日

鬼窪の野ー道程・文月(13)

かって表参道の第一鳥居前に鬼窪邸という美しい洋館が建っ
ていた。
建築家田上義也の名建築のひとつで、美しい藤棚のある大き
な庭もあった。
バブルの頃この邸宅は壊され、今はタワーマンシヨンが聳え
ている。
土地を購入した不動産業は当時の拓銀系の不動産会社だった
が、親会社の拓銀の倒産とともに倒産し2年近くそこは空き
地のままとなっていた。
半年ほど経った春だったろうか、たまたまその前を通った私
は、その場の変貌に目を剥いた。
剥き出しの赤土だった空き地が一面お花畑に変わっていた
からである。
2階建ての洋館の在った場所は、辛うじてその面影が土痕に
残ってはいたが、周りの庭であった部分は一面の花が咲き乱
れている。

都市の仲通・裏町をひとつの文化ゾーンとして考えながら、
ふっとこの更地の後に出現したお花畑を思い出していたのだ。
裏町に根付く小さな個の趣味・嗜好が野の花の一輪のように
在る。
街路自体は計画され計測された公的な舗装道路である。
そこに時の熟成と人の営為が裏町を育て、あの野の花のよう
に咲き出すものがある。
それは公的なものではなく、極めて私的で小さな野の一輪の
花のようなものだ。
その一輪がいつの間にか群生して、お花畑を創る。
小樽の瀧口修造展で再現されていた瀧口青年の夢の店ローズ
セラビーとは、裏町に咲いた一輪の文化の花でもあったよう
に思うのである。
都市化というある種の更地化を経て、そこに趣味嗜好の個的
種子が育ってくる。
この極めて個人的な小さな種子が、時を経てお花畑となる
ように一面に広がって時代を創る場合もある。
意図的に植えられた花壇文化とは一線を画すものである。
都市化と同様の意図的に道路を彩るカラーデザイン・花壇で
は元々ない、自然に生まれた極めて小さな綿毛・種子がその
素にはあるからだ。
鬼窪邸の更地の痕に咲いたお花畑のようにである。

言いたい事は、最初から時代を代表するものなどないという
思いである。
最初は極めて個的な裏町に根付く趣味・嗜好のように一輪の
野の花のように立ち顕れる。
そしてその個的なものを許容できる空間が、本当の都市空間
であり、豊かな土壌の野なのだという思いである。
小さな個、狭い裏通りから、真に時代を代表するお花畑・森が
生まれ得るかもしれない。
しかししてそれは結果論であり、萌芽・繊毛・綿毛の最初の場
は、無名な野のような時代という土壌なのだ。
最初から囲われ特権化した花壇のような空間から本物の花・文化
は咲き乱れはしない。

*「記憶と現在ー小樽・札幌」展ー7月21日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
*”ZO”展ー7月24日(水)まで。
 am12時ーpm7時:月曜定休。
 Caballero札幌市中央区南1条西1丁目2番地大沢ビル4F
 tel09076401305

by kakiten | 2013-07-18 13:07 | Comments(0)


<< 幟調子ー道程・文月(14)      都市論としてー道程・文月(13) >>