K氏の「ZO」展会場へ行ってきた。
まだ展示は出来ていず、雑然と物が転がっている。
場所は都心の仲通の古いビルの4階の一室。
エレヴェーターも部屋も都市の時を経た時間の撓みが
漂っている。
街中に今もこうした時の留まったような一角があるのを
知らなかった。
どこもスクラップアンドビルドのピカピカな空間ばかり
で、少しも落ち着く気がしなかったからだ。
札幌発祥の地に近いこの仲通の古いビルには、都会の放蕩
の緩やかな澱みが澱(おり)のように息をしていた。
昔シカゴの裏町を歩いた事を思い出した。
K氏の部屋からさらに上階に行くと、そこは大きなスピー
カーのある喫茶室で、外に開かれたテラスと椅子が心地良
い。時がゆったりと流れて、ああ、久しぶりに喫茶店で
寛いでいるなあ、と感じる。
スターバックスのような路面店とは正反対の、知る人ぞ知る
ような閉じた空間である。
札幌の都心にもこうした裏通り・裏建物がゆっくりと呼吸
していると知っただけでも収穫であった。
品のある寂れた空気が良い。
瀧口修造の記憶を札幌で展示するとするなら、ここはすっと
着地できる時間層が生きている。
さすがインテリ遊民K。
小樽文学館で瀧口の夢であったレトロな店が再現されていたが、
ここは札幌版レトロな裏町空間である。
昭和・大正ロマンのアメリカ版のような薫りをもつ裏街である。
そこに小樽にはないこの街での瀧口がある。
来月吉増剛造さんの大草稿の塊りが届きK氏の空間に鎮座し、
K氏の瀧口修造の記憶が散りばめられる時、ここはどんな
空間に変わっているだろうか。
小樽発瀧口修造展、その後の波紋展である。
+「記憶と現在」展ー6月30日(日)まで。
am11時ーpm7時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503