人気ブログランキング | 話題のタグを見る

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2013年 06月 26日

古いビルと喫茶店ー光・水無月(19)

K氏の「ZO」展会場へ行ってきた。
まだ展示は出来ていず、雑然と物が転がっている。
場所は都心の仲通の古いビルの4階の一室。
エレヴェーターも部屋も都市の時を経た時間の撓みが
漂っている。
街中に今もこうした時の留まったような一角があるのを
知らなかった。
どこもスクラップアンドビルドのピカピカな空間ばかり
で、少しも落ち着く気がしなかったからだ。
札幌発祥の地に近いこの仲通の古いビルには、都会の放蕩
の緩やかな澱みが澱(おり)のように息をしていた。
昔シカゴの裏町を歩いた事を思い出した。
K氏の部屋からさらに上階に行くと、そこは大きなスピー
カーのある喫茶室で、外に開かれたテラスと椅子が心地良
い。時がゆったりと流れて、ああ、久しぶりに喫茶店で
寛いでいるなあ、と感じる。
スターバックスのような路面店とは正反対の、知る人ぞ知る
ような閉じた空間である。
札幌の都心にもこうした裏通り・裏建物がゆっくりと呼吸
していると知っただけでも収穫であった。
品のある寂れた空気が良い。
瀧口修造の記憶を札幌で展示するとするなら、ここはすっと
着地できる時間層が生きている。
さすがインテリ遊民K。
小樽文学館で瀧口の夢であったレトロな店が再現されていたが、
ここは札幌版レトロな裏町空間である。
昭和・大正ロマンのアメリカ版のような薫りをもつ裏街である。
そこに小樽にはないこの街での瀧口がある。
来月吉増剛造さんの大草稿の塊りが届きK氏の空間に鎮座し、
K氏の瀧口修造の記憶が散りばめられる時、ここはどんな
空間に変わっているだろうか。
小樽発瀧口修造展、その後の波紋展である。

+「記憶と現在」展ー6月30日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-06-26 12:56 | Comments(0)


<< 自転車パンクー光・水無月(20)      閉じて、開いてー光・水無月(18) >>