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テンポラリー通信

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2013年 06月 14日

碧血の海ー光・水無月(10)

ふっと今度の小樽行きを反芻していて思い出す事があった。
美術館・文学館の建物を下り、堺町本通りから見えた急峻な坂道
の上にある水天宮に行った時の事である。
かってその丘の上に京都の友人の別宅があって訪ねた事があった。
そこから見える海の向こうに青と白のモスクのような建物が見えた。
友人はいつもあの建物は何だろう?と不思議に感じていたという。
遠く平坦な海岸が広がり、この白と青に彩色された大きな建物だけ
がふっと海の向こうに浮かぶように目立つのである。
私にはその時その建物が何であるか、すぐに思い出した。
北石狩衛生センターである。ゴミ焼却炉なのだ。
石狩河口を渡り厚田の方へ続く古道の海岸に忽然と現れるのが
この建物である。
元々はハマナスが生い茂る美しい砂丘地帯だったが、そこに白と青
の迷彩色を施した塵芥償却処理場と犬猫処理場が建てられた。
車で通り抜けると、それらは空の青と雲の白と溶け込み、鉄条網は
緑の針金で彩色され一瞬見過ごしてしまうのだ。
私はこの道を河口から何度も歩いていたので、その風景の迷彩を
いつも感じていた。
石狩川を跨ぐ大橋が出来る前は、フエリーボートか渡し舟が川を繋い
で、この道は道北への幹線通路だったのである。
今は川の上流に石狩大橋ができて車で繋がり、この道は見捨てられ
たかのように寂れている。
そうした場所に塵芥焼却炉が出来るのはあの元村街道と同じ運命で、
かっての幹線道路が今は都市に近い消費焼却基地として在るのだ。

青年瀧口の感性を育んだ小樽の風土が今も生きていると感じた堺町本
通り沿いの緩やかな坂道の向こうに、湾を隔て遠く霞むようにモスク
のような青と白の塵芥焼却炉が建っている。
そして一方小樽の小高い丘の上には、水を祀る水天宮が建っている。
同じ海に面してこのふたつの差異はどこからくるのか。
それは地形の差異も勿論あるだろう。
街の中心の捉え方が、海から離れた内陸の都と海に面した港の相違と
して、海に対する接し方の差異とも考えられるが、果たしてそれだけ
なのだろうか。
海を広く自然と考えれば、海に接する小樽は自然とともに都市があり
海のような圧倒的な自然を喪失し続けている札幌のような都市は自然
を埋め立て伐採し征服するような対象としてしか見てこなかったのでは
ないだろうか。
元村街道そして石狩の古道を思うと、いつもそうした風景に出会うので
ある。
風景の内側に蓄積された時間の保水力が喪われた処では、文化の土壌も
また喪失していくのではないのか。

札幌が駄目で小樽が良いなどと単純に結論付ける気は毛頭ない。
瀧口・小樽経験を小樽の友人T氏に洩らしたところ、彼は一言で私の感想
を切り捨てた。
小樽は死に体の街です。そこが外から見ると魅力に見えるのでしょう。
小樽人からみれば、なにを外からたまに来て・・という事なのかも知れ
ない。
しかし外からしか見えない事もある。
私は小樽から札幌を見ている訳で、小樽を本当に見ている訳ではない。
私は自分の札幌を、そしてなによりも自分自身をそこに見届けようとして
いるのだ。

*記憶と現在展ー6月12日(水)-30日(日)まで。am11時ーpm7時。
 月曜休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-06-14 13:43 | Comments(0)


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