築50年近い古い建物のまず1階天井部分を破り2階と空間を繋ぐ作業にかかる。
何度かの改装で弁当屋さんになったり縫製工場に使われたりしていた為天井も
壁も都度都度変えられているが、元の床の間の部屋だった頃の骨格が現れてく
る。美しい梁土壁が出てきて感激する。そして空間がよりシンプルになる。大家さ
んの岩澤さんも見に来て幼い頃を思い出しているようだった。天井の低さが2階を
落とす事ですっきりした。しかし約50年の積もった埃で頭も耳も鼻も真っ黒。棟梁
中川さん粛々と仕事進める。私は慣れぬのこぎり片手に天井の梁に掴まり不安定
な姿勢で余分な部分を切っていく。汗ダラダラ、洟も出る。そうこうして梁を残し天井
が開いた頃清治拓真さんが手伝いにきてくれる。若い美術家である。そして河田雅
文さんもくる。「おお!もう3分の1終わったなあ、早い早い!」と言う。それから4人
で黙々と仕事は進んだ。気がつくともう午後6時半を過ぎていた。古い家の上に色
々と被っていた見た目スマートな薄っぺらな板、沢山の余分な配線そしてその下に
あった本来の骨格それはまるで日本の近代のある側面そのもののようだった。
壊しながらその家が本来保っていた姿を発見していく作業をしていると美術のフロ
ッタージュという擦り出し作業のようにあるいは凹みの作家谷口顕一郎さんの傷跡
のトレースを思い出したりした。表面を被う皮膜の下に時代時代の衣装があってそ
の薄さと対照的な骨太な土壁、梁、欄間が普通の民家なのだが、保っていたのだ
。現代の家には後年こうした発見があるのだろうか。1日目の解体はこの家のRE
、命革めるの感がある。