2013年 04月 03日
15人の展示片付けに入る。 山田航さんに寄贈するという人もいれば、テンポラリーの収蔵品 に寄贈する人もいる。 広島、帯広、網走、東京と札幌以外の人も多いので個展よりも 搬出の時間がかかる。 作業中九州・福岡の彫刻家阿部守さんより電話がくる。 自分も参加したかった、という。 そうか、九州までは頭が回らなかった・・・。 今度はもう少し年齢を上げて参加者に加えさせてくれよと、 阿部さんが言う。 別段年齢で枠を作った覚えはない。 そんな僻みぽい事を言って、今回の展示への意欲を言いたかった のだろう。 それだけ今回の企画と山田航歌集に惹かれたという事と理解した。 阿部さんの鉄の彫刻が入れば、また一段と空間は変わったと思う。 昨年2月の清華亭とここの展示以来お会いしていないから、久し振 りの連絡は嬉しかった。 阿部守さんならば、どの一首を選んだのだろうかと興味が湧く。 若い世代を生徒に持つ大学の教師の目線となるのか、それとも 自分自身の作品の指標として一首が選ばれるのか、作品を見て 見たい気がした。 次回個展の際には、これを主題とする一点をお願いしたい。 4月は次の展示が未定で、しばらく空白となる。 世間は明年の札幌国際美術展へ向けて、さまざまなイヴェントが 地下歩行空間を主体に企てられている。 都市と自然というテーマのようだが、本当の意味で<自然>と いう主題に向き合っているのかどうか疑問である。 本来自然と都市とは相反する概念で、問題の本質は自然と社会の 界(さかい)を、如何に捉えるかという事と思う。 先人の考えた里山とか裏山。防風林といった自然化した社会と 社会化した自然という緩衝地帯こそが今問題である。 その自然と社会の界(さかい)の世界が取り払われて、すべてが 仮設と遮断の空間に取って代わりかねない状況にある。 人間は自然そのものの中では生きてはいけないし、自然を完全に 排除して社会構造そのものだけでも生きてはいけない。 ビルや地下鉄だけの構造では索漠とした世界となり、原始林や山の 中で人は生きてはいけない。 このふたつの矛盾する環境を中和し、相互に通じる回路として<界 (さかい)>としての社会化した自然、自然化した社会がある。 それが庭の樹であり、防風林であり、裏山であり、里山と呼ばれる 自然なのだ。 その界(さかい)が今危機に瀕している。 しかもその界(さかい)の自然を、アートというものが肩代わりしよう と蠢いている。 全くの思い上がりというものである。 その前兆ともなったのが、札幌では札幌ドームの建設時に造られ たアートグローブ(芸術の木立ち)と称された野外芸術群である。 月寒の地名の語源ともなったチ・キサ・ニ(ハルニレ)の丘陵を削り サッカーや野球の競技場を建設し、その伐採した丘森の代わりに アートグローブという代わりを用意したのである。 チ・キサ・ニ(我ら・こする・木)とは、春楡の木片をこすって火を作っ たところからでた名前といわれ、正に自然と人間社会の界(さかい) の自然としてこの丘陵地帯の丘があった事を示しているのだ。 その代用としてアートグローブなる<芸術の木立ち>とは、一体何 なのか。 この流れは今も大規模地下通路や大規模建設物等の中でアート何 とかという形で連綿として続いている。 芸術が自然の代用となる事はない。 芸術・文化は自然との回路を開くことはあっても、その代用となる事 はない。 あくまでも社会化した自然として、界(さかい)としての倫理を凛として 守るべきなのだ。 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2013-04-03 15:45
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