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テンポラリー通信

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2013年 03月 29日

青い週末ー風の夢(20)

ひとりひとりの作品を見詰めて、はやもう会期も終わりに
近づいて来た。
追憶の一瞬を<濡れた睫毛のうへで><魚>へ<山羊>
へ<犬>にと<青い週末>に見据えている。
かって愛したであろう女性を正面から撮った藤倉翼の写真。
その一葉を選んだ一首は、

   永遠といふ名の青い週末に死よりも少し愉しい旅を

さらに吉原洋一氏の組写真は、

   目覚めぎは僕はひとつの約束を胸に浮かべたまま山羊となる

そして高臣大介氏のガラス作品は、

   粉雪のひとつひとつが魚へと変はる濡れたる睫毛のうえへで

竹本英樹氏の写真は、

   歩き出さなくてはならぬかなしみを犬をからかってごまかしてるね

ふっとふり帰るように、追憶の中でそれぞれが見詰めているかのような
一瞬の切り取りが写真やガラス造形に結晶している。
そこに<永遠といふ青い週末>が、どこか共通してあるような気がした。
ガラスに溜まる光の翳、フイルムに遺された青い一瞬の犬の後足、渚の
霞む水平線と岸辺の縦と横に組み合わされた遠い約束のような浜辺の
風景。
これらが選ばれた一首とともに語りかけるものは、<目覚めぎは>の
ような夢の残像でもあろうか。
その界(さかい)の淡いに追憶の永遠が息づいて、会場全体に柔らかい
流れを創っている。
野上さんや藤谷さん、中嶋さんやアキタさんのような強力の作品では
ないけれど、これらの作品たちもまた今回の展示に美しい緊張感と空気
の流れを形象してくれたと感じている。

*山田航歌集「さよなら バグ・チルドレンをめぐる変奏」展ー3月31日まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2013-03-29 14:06 | Comments(0)


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