2013年 03月 27日
K氏がお子さんの宥佳ちゃんを連れて来る。 今年4月小学校に入るという。 しばらく見ない間にすっかり大きくなって、早速梯子を 登り2階吹き抜け廻廊を走り出す。 奥の階段も利用して、独楽鼠のように階下へも降りて来て さらにまた2階へと登りだす。 この繰り返しと、作品とのボデイランゲージが交互に重なる。 子供パワー全開である。 ちょうど来た秋元さなえさんも巻き込んでエンジン全開、 階段・梯子を上下する。 父上のK氏は手を離れて自由に飛び回っている宥佳ちゃんを やれやれと安心して見ている。 この小さな女の子の強烈なパワーは、この後2時間程も休み なく続く。 梯子・吹き抜け・廻廊・奥階段・作品・人と、子供の五体五感 すべてを刺激する楽しい秘密の世界が飽きる事無く満載なのだ。 2時間近く宥佳ちゃんに付き合った秋元さんも最後はさすがに 草臥れたようだったが、その終わりに宥佳ちゃんの放った一言 が傑作であった。 ”あんた、男の子?” 20代前半の妙齢な女性としてこの一言は、かなりショックだった のではないだろうか。 宥佳ちゃんと同じ年齢の頃やはりパワー全開で会場を跳び 廻っていたT氏のお子さんで結音ちゃんという女の子がいる。 今年小学校卒業で、4月中学生である。 この子が先日T氏とともに来て、卒業アルバムを見せてくれた。 その中に将来の夢と題して文集があった。 T氏が私に、読んでくれと言う。 それは将来小さな美術館で自分の個展をするという夢であった。 大きな美術館ではなく、小さな美術館でいろんな人と会って自分 の作品を見てもらうという夢が、一生懸命に理由を幾重にも重ねて 書かれていた。 ちょうど今の宥佳ちゃん位の時ここに初めて来て、同じように会場 中を走り回っていたのである。 それから何度もここに来て育んだ夢がこの小さな美術館で個展 という夢に卒業文集に顕われているのかと、思わず胸に来るもの があった。 今回の「さよならバグ・チルドレンをめぐる変奏」展で大人たちは、 意識上でそれぞれ自分の世界を創りだしている。 しかし子供は全身を使って、その五体五感のすべてを解放させて 会場を走り回る。 しかしして、決して作品を疎かにしているわけではない。 むしろ非常に尊重し、遊びの道具立てとして柔らかくその周りを 楽しんで周回している。 彼らは意識よりも身体で感じている。 それが時とともに、結音ちゃんのようにやがて意識として夢を語る ように美しく結実する。 それが小学6年生の将来不確かな夢として語られようと、間違いも なくある時期ここに身体で全身で感じていた楽しさが容(かたち)と なって記されたのだ。 これを読んだHさんが、一言呟いた。 これはコピーして飾っておいた方が良いわ、 そうだね、小さな賞状。 そして、楽しく遊ばせてくれたここすべての作品たちへの感謝状 だね・・。 今日も作品たちが静かにだが雄弁に白い空気の中に熱く沈んで また全身全霊で受け止めてくれる大人・子供を、待っている。 *山田航歌集「さよなら バグ・チルドレンをめぐる変奏」展ー3月31日(日) まで。am11時ーpm7時。 :野上裕之(彫刻)・佐々木恒雄(絵画)・藤谷康晴(絵画)・中嶋幸治(造形)・ アキタヒデキ(写真・文)・高臣大介(ガラス)・森本めぐみ(造形)・吉原洋一 (写真)・久野志乃(絵画)・ウメダマサノリ(造形)・メタ砂糖(写真)・藤倉翼 (写真)・竹本英樹(写真)森美千代(書)+及川恒平(ソング) テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向 tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2013-03-27 13:08
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