昨夜は午後5時から田中綾さんと山田航さん及川恒平さんの鼎談と
その後及川恒平さんのソロライブがあった。
25人程が集り、狭い会場は熱気に包まれる。
田中綾氏は山田さんの大学院での先生でもあり、短歌批評の先輩
でもある。
またフォーク歌手の及川さんは、今回山田さんの歌集から5首を選
んでソングとしてこの日唄うという事だった。
最初に田中さんから短歌の側から種々評論されている山田航歌集の
批評文のコピーが会場に配られた。
その短歌界の批評軸と今展示中の各美術家、写真家の作品選択軸
の相違が先ずは主題となった。
特に原作者である山田さんの方から作者の想定した言葉の枠を超
えて、絵画が書が写真が造形が形象したものに新鮮な驚きを感じて
いる事が述べられた。
選んだ一首の一字一句の被写界深度が、個々の作家の生の現場に
深く垂鉛を降ろしてその作家固有の世界を表現しているからである。
歌に添って作品があるのではなく、ふたつの世界が一種のバトル、ス
パークするかのように、個々の作品が存在している。
その驚きとある種の喜びを率直に山田さんは語ったのだ。
通常よくある詩画展のような並列的な作品ではなく、ひとつの言葉に
触発された個々の制作の根っ子の処でそれぞれの作品が立ち上が
って表現されている。
その事に自らの作品でありながら、全然別の作品と出会っているよう
な幸せを語ったのだった。
私もまた今回の展示を見て、個々の作家の一番大切な主題が山田
さんの一首を選ぶ事で展開されているのを感じていた。
従って個々の作品評は、そのまま個々の作家論として非常に重要
な転機点としてみえていたからである。
こうして話は、それぞれのジャンルを超えて個々の生活の一番深い
処で語られるコアの場に垂鉛が降ろされていった。
話題となったのは、野上裕之さんの仮面作品と生、佐々木恒雄さん
の国境という直線、アキタヒデキさんの望郷と生命線、森美千代さん
の林檎と息子、中嶋幸治さんの指とタクトといった作品と言葉の深い
関係性についてであった。
その後及川恒平さんの柔らかな声が、山田さんの初期短歌を唄に変え
会場を満たした。
この歌の選択にも及川さんの選択があって、どの歌も他の作家と重なる
事はなかった。
鼎談とライブ終了後、何時になく饒舌で、何時になく沢山お酒を飲んで
いる幸せそうな山田航がいた。
*山田航歌集「さよなら バグ・チルドレンをめぐる変奏」展ー3月31日(日)
まで。am11時ーpm7時:月曜定休。
:野上裕之(彫刻)・藤谷康晴(絵画)・佐々木恒雄(絵画)・森本めぐみ(
造形)・高臣大介(ガラス)・久野志乃(絵画)・吉原洋一(写真)・アキタ
ヒデキ(写真・文)・ウメダマサノリ(造形)・森美千代(書)・中嶋幸治(造形)
・メタ佐藤(写真)・藤倉翼(写真)・竹本英樹(写真)・及川恒平(ソング)
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